- 日替わりコラム
Wed
10/29
2025
生きものは、食物連鎖によって栄養の受け渡しを行い、互いに支え合っています。魚介類の間でも、人間のように協力したり利用し合ったりすることがあり、これを共生と呼んでいます。
体長数センチのコトブキテッポウエビと魚のヒレナガネジリンボウは、砂地の海底で同じ巣穴に住んでいます。彼らは信頼し合う相棒で、穴を掘ったり掃除したりするのがエビの役目、巣穴の入り口で外敵を警戒するのが魚の役目です。巣穴の入り口で一心に手入れをするエビの触角は常に魚の尾びれに触れており、魚が外敵を発見すると合図が送られ、避難します。また、体長4cmほどのウチワエビの幼生は大海原を漂いながら成長しますが、旅のお供はクラゲです。クラゲにまたがって進む様子から「クラゲ乗り」の異名もあります。可愛らしいので近づいて見ようとすると、毒のある棘を持つクラゲの足をこちらに向けてくるため、ぞっとします。さらに、幼生がクラゲを餌にしていることを知ってがっかりしました。一方で駆け引きをする魚もいます。岩の間に獲物の魚が逃げ込んだとき、一部のハタはウツボにジェスチャーで協力を頼みます。このとき、岩の間に潜り込んで魚を捕らえたらウツボのもの、取り逃がして魚が飛び出したらハタのものです。人間は貿易や領土を巡って争いますが、相互利益のある共生を目指したいものです。
参考文献:
『 共生する生きもの図鑑』サミ・ベイリー著、上原ゆうこ訳 原書房(2023)
『ゆるゆるクラゲ・プランクトン図鑑』和音著、新江ノ島水族館ほか監修 Gakken(2021)
『魚は痛みを感じるか?』ヴィクトリア・ブレイスウェイト著、高橋洋訳 紀伊國屋書店(2012)
古田優
全部または一部を無断で複写複製することは、著作権法上での例外を除き、禁じられています
- アクセス