- 日替わりコラム
Wed
11/5
2025
モグラはなぜ地中で生活するように進化したのでしょうか。トンネルを掘って生活するのは大変ですし、どんなメリットがあるのでしょう。それはやはり「安全」ということに尽きると思います。僕はモグラのトンネルに仕掛けたワナでイタチ類を捕まえたことがありますが、モグラがもっとも恐れる敵は肉食性の鳥類です。フクロウが育雛(いくすう)の際にモグラを餌として運ぶことは、フクロウが吐き出すペリットの調査から知られています。ただし、これは親離れした若い個体が地上をさまよっているときに捕食されるのではないかと想像しています。地中生活に適応するため、モグラの前足はほぼ真横を向いており、地上を歩くには不便です。肉食動物に捕食されるのは、この時期が圧倒的に多いでしょう。
独立生活を始めたモグラはトンネル内にいる限りほぼ無敵です。地中生活は安全、そのためモグラが生息できないような海外の乾燥地では、齧歯類(リスやネズミ)が地中生活者へと進化しています。南米大陸には、地中生活をする小型のアルマジロがいます。アフリカの南部にはキンモグラというモグラとは別系統から進化した動物がいますし、オーストラリアには有袋類のフクロモグラがいます。いずれも、安全を求めて土掘りのテクニックを向上させ、モグラのような生活スタイルへと進化した哺乳類たちなのです。
国立科学博物館 動物研究部川田伸一郎
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