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11/18
2025
2021年、成田空港でシカシロアシマウスが生きた状態で捕獲されました。本種はアメリカ本土の人家などで一般的に見られる小型のネズミです。このネズミはハンタウイルス肺症候群(HPS)を保有することが知られており、検疫所では捕獲時に必ず抗体検査を行います。その際、成田空港で捕獲された個体からも陽性反応が確認されました。
HPSは腎症状を伴わずに呼吸困難と肺水腫を呈し、約50%が死亡するという恐ろしい急性呼吸器感染症です。1993年、アメリカ南西部で肺水腫を伴う急性の呼吸困難による死亡例が複数報告されたことで、初めて問題視されました。さらに1995年以降は、南米各地からも次々と発生が報告されています。
ハンタウイルスの特徴はネズミ媒介性であることです。主な感染経路は、新鮮あるいは乾燥した糞や尿に含まれるウイルスをエアロゾルとして吸い込むことによるもの。また、ネズミの咬傷や、ネズミに触れた物を介して鼻や目、口にウイルスが接触することでも感染します。近年の研究では、ヒトからヒトへの感染例も報告されるようになりました。
現代では、航空機による短時間での国際移動が可能です。致死率の高い感染症に対しては、今後も専門知識を持つ検疫官による細かな監視と調査が欠かせません。
イカリ消毒株式会社 名誉技術顧問谷川力
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