- 日替わりコラム
Wed
11/19
2025
サボテンの茎を切って、その切り口に触れたことはありますか。手で触ると、ネバネバしているのがわかります。これはサボテンの細胞内に含まれる粘液によるもので、ほぼすべてのサボテンは葉や茎、果実内に粘液を含んでいます。
この粘液にはどんな役割があるのでしょうか。粘液は主にアラビノースやガラクトースといった単糖がつながってできた多糖類という物質からできていて、水分を引きつける性質があります。そのため、粘液の主な役割は、サボテン内部の水分をしっかりと保持し、外に逃がさないようにすることだと考えられています。
この粘液、なんと私たちの暮らしに役立つ可能性があります。近年、サボテンに含まれる粘液を産業利用しようとする研究が盛んに行われています。たとえば、粘液の生理作用として、血中コレステロールを減少させる作用や血糖値の上昇を抑制する作用、抗潰瘍作用、抗酸化作用などが報告されており、機能性食品素材としての利用が期待されています。さらに、生分解性(微生物によって分解される性質)のポリマーとして活用する研究も進められており、安全性の高い食品用フィルムやコーティング剤、添加物(増粘安定剤、乳化剤)などとして、食品業界や化粧品業界から注目を集めています。
中部大学 応用生物学部堀部貴紀
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