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12/9

2025

トルコ便り(2)極寒の高原にマダニがいる?

 以前紹介した「日本・トルコ感染症プロジェクト」の下で、2024年からマダニ調査を行っています。調査地は中央アナトリアのスィヴァス県と黒海地方に位置するトカット県。スィヴァスはオスマン帝国(1299~1922年)以前に栄えた歴史ある町で、12世紀に建てられた大モスクや静かな町並みが印象的です。トカットの岩山の頂上にはトカット城の残骸があり、川沿いにはオスマン帝国調のレトロな町並みが広がります。どちらも市街地のすぐ近くに高い山がそびえ、夏は北海道のような冷涼な高原、晩秋には雪が積もる凍える荒原の放牧地でマダニを採集します。マダニが好むイノシシやシカなど大型の野生動物がいない都市部では、日本もトルコもマダニ相は単純で生息数も多くありません。しかし、ヤギやウシなどを飼っているトルコの農村部は、クリミア・コンゴ出血熱(CCHF)や野兎病などの浸淫地になっています。
 「こんなに過酷な環境にマダニが?」私たち日本人チームは半信半疑で旗ずり※ をしますが、なんとCCHFのベクター(媒介生物)であるHyalomma属のマダニが多数採集されました。ヤギやウシ、外飼いのイヌやネコにもマダニは多数咬着しています。このような日本との環境の違いに驚きつつも、黙々とマダニを探します。マダニと病原体の関係性を理解することが本プロジェクトの目的です。

※ 白色フランネル布を引きずって付着したマダニを採集する方法

東京大学 大学院 農学生命科学研究科澤邉京子

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