- 日替わりコラム
Thu
12/11
2025
この夏、私は交通事故に遭い、地域の中核病院に緊急搬送されました。肋骨が10本も折れていたため、HCU※ で点滴や輸血などの治療を受けました。
私の経過はさておき、酷暑の影響か、HCUには熱中症で運ばれてくる高齢者が何人もいました。痛みで眠れない夜、カーテン越しに聞こえてくる声は、私にとって”夜の灯り“のような存在でした。ある日、同室の患者さんが「お姉ちゃん、水を飲ませて」と大きな声で呼びかけると、看護師さんが「お姉ちゃんではなくて、看護師です。順番に行きますから待っていてください」と大きめの声で毅然かつ丁寧に返すのを聞いて思わず笑ってしまいました。どうやらこの患者さんは一人暮らしの高齢者のようで、看護師さんに話し相手になってほしくて甘えているように感じました。こうしたやりとりを聞いているときは、孤独と痛みの中でも、ふっと心が軽くなる瞬間でもありました。
少子高齢化が進む現在、こうした光景はどこの病院でもみられると思います。中核病院のHCUは、命に関わるリスクを抱えた人々が安心して治療を受けられる場であり、日夜、このHCUを支える医師や看護師さんの尽力こそが地域医療の要であることを改めて実感する、そんなひと夏でした。
※ High Care Unit の略称、高度治療室
元保健所食品衛生監視員小暮実
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