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Wed

12/17

2025

ラットを屋外に放してみたら

 実験室で飼われてきた実験動物であるラットは、野生のドブネズミのような生活ができるのでしょうか。このことを検証するために、実験用ラットを屋外の囲いに放ち、その行動を観察する研究が行われました※ 。
 その結果、放たれたラットは直ちに、ドブネズミと同じように地下に巣穴を作り、そこに密集して暖を取ることで氷点下30℃を下回る冬の寒さにも耐え、生活できることが明らかになりました。また巣穴の形や構造、掘る順序もドブネズミと一致していました。そして、巣作り用の材料の有無やラットが妊娠しているか、屋外で育ったかなどといった要因は、巣穴掘りの行動や作られた巣穴の特徴にほとんど影響を与えないことがわかりました。さらに、巣穴に食料を貯蔵する、地上では決まった通路を利用する、なるべく地上で排泄するなど、ドブネズミに典型的な行動も多数見られました。
 この結果から、何世代にもわたり人間に飼われていても、実験用ラットはいまだ多くの本能行動を持ち続けており、適切な環境になればそれらを発揮できることが示されました。また同時に、実験用ラットは実験室内では巣穴を掘る行動をとらないことから、動物の行動を理解するためには、その動物本来の行動が現れやすい状況を観察しなくてはいけないことも示唆しています。

※ Boice, R., Burrows of wild and albino rats: Effects of domestication, outdoor raising, age, experience, and maternal state.
  Journal of Comparative and Physiological Psychology, 91(3), 649―661(1977). https://doi.org/10.1037/h0077338

東京大学 大学院農学生命科学研究科 准教授清川泰志

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