- 日替わりコラム
Wed
6/17
2026
『田舎のネズミと町のネズミ』というイソップ寓話※ は広く知られていますが、実際のネズミもこれに似た行動の違いが認められています。
イカリ消毒の技術研究所では、小笠原諸島父島で捕獲した屋外由来の系統(小笠原系統)、新宿で捕獲した市街地由来の系統(新宿系統)の2系統のクマネズミで実験しています。前者はいわば「田舎のネズミ」、後者は「町(都会)のネズミ」と位置づけることができます。両者の違いは、殺鼠剤への抵抗性だけでなく、行動面にも顕著に表れています。たとえば、広さ4畳半ほどの実験室内でトラップを設置すると、小笠原系統は比較的容易に捕獲されますが、新宿系統はほとんど捕獲されません。また、餌を段ボール箱に入れて喫食量を測定すると、小笠原系統では通常と大きな差は見られないのに対し、新宿系統は箱そのものに警戒し、喫食量が大きく低下します。試験を継続することで新宿系統の喫食量も回復しますが、初期段階における警戒行動には明確な差が認められます。
では、この違いはなぜ生じたのでしょうか。新宿系統は人間の生活環境の中で暮らし、日常的に人や人工物に接することが多く、危険回避行動が強く選択されてきた可能性があります。イソップ寓話のような交流の有無は定かではありませんが、都市環境に適応した行動を繰り返す中で、結果として警戒心の強い個体群が形成されたと考えられます。
※ 古代ギリシャの人物イソップに由来するとされる短い物語集。
主に動物を主人公にした話が多く、人間社会の教訓や価値観を伝えることを目的としている
イカリ消毒株式会社 名誉技術顧問谷川力
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