- 日替わりコラム
Thu
8/27
2026
向田邦子ドラマを語る中で、演出家としてタッグを組んだ人の筆頭は?と聞かれれば、久世光彦(くぜてるひこ)※ と言い切れます。久世と向田邦子は、TBSドラマ『七人の孫』からのつながりで、久世はその後、TBSで多くの向田邦子ドラマを演出しています。
父は海軍少将、兄は自治官僚から政治家になった久世公堯(きみたか)です。筆者が知る久世は、エロスに近い耽美的かつ懐古的なところがあり、せっかちで完璧を目指すが、本人の思想信条の引き出し(知識)があまりにも多すぎる。そして表現方法が衝撃的なため、ちょっと近寄りがたいというように感じます。演出に関わった『時間ですよ』『寺内貫太郎一家』などを見ると、確かに面白いが妙な悲しみがありました。それは、久世が常に美しいものを求めた現れかもしれません。それを象徴する久世の文章があります。「一番美しいものは、いちばん凶凶(まがまが)しいものと背中合わせにいるものだ。きれいなものを見たかったら、怖い思いをしなくてはならない。私は10歳の夏の夜、それをはじめて知ったのだった」。
久世はTBS退社後、小説やエッセイの執筆、さらに作詞も行っています。泉鏡花文学賞・山本周五郎賞・日本レコード大賞・日本作詞大賞などを受賞、直木賞候補にもなりました。彼はテレビというメディアを使って、自身のマルチな才能を最大限に発揮した人だと思います。
※ TBS出身の演出家、映画監督、舞台演出家、小説家、実業家、テレビプロデューサー。
TBSは『ムー一族』を最後に退社。2006年3月没
写真技術研究所別所就治
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