特集

弊所発行の「月刊クリンネス」に掲載された過去の連載コラムの中から、テーマ別に選りすぐりの記事をご紹介します。

注目すべき食中毒

東京食品技術研究所 所長(執筆当時) 鈴木達夫

食品 注目すべき食中毒ペットボトルからの感染

 コンビニエンスストアやスーパーの棚には、多くのペットボトル飲料が並んでいます。ペットボトルや缶入り清涼飲料水の日本人の消費量は、1人当たり年間160リットルを超えているそうです。これは、毎日およそ500ミリリットルを飲んでいる計算になります。品目別ではコーラなどの炭酸飲料が首位で、次いで急伸しているミネラルウォーターが、コーヒー飲料をわずかに抜いているようです。
 ペットボトル飲料では、飲み残しに注意が必要です。口をつけて飲んだ場合には、口の中の雑菌や食べ物のカスがペットボトル中に移行します。その結果、ミネラルウォーターであっても雑菌が繁殖することがありますので、口をつけたペットボトル飲料は、その日のうちに飲みきるようにしましょう。自宅で大容量のペットボトルから飲むときはコップに注いで、開栓後は必ず冷蔵庫に保管して早めに飲みきりましょう。また、オフィスや家庭などでサーバー型のミネラルウォーターを利用されている場合は、清掃や蛇口の消毒など機器の日常のメンテナンスをしっかりと行うことを心がけてください。
 ペットボトルをキッチンや調理場で液体洗剤入れとして再利用していることがありますが、誤飲による食中毒も起きています。避けてほしいのですが、再利用する場合にはしっかりと表示しましょう。
(2017年1月号掲載)

食品 注目すべき食中毒魚の毒

 魚が持つ毒の代表には、ふぐ毒のテトロドトキシンがあります。テトロドトキシンが含まれる有毒部位を除去すれば食用可能なふぐは、トラフグ、マフグやショウサイフグなど、約20種類定められています。ふぐの種類の見分けは大変に難しく、また種類ごとに有毒部位も異なります。ふぐによる食中毒は素人調理によるものが大半ですので、絶対に素人料理はやめましょう。
 温暖化の影響で海水温が上昇し、南方の魚が北上して珍しい魚が釣れることがあります。このような見慣れない魚には注意が必要です。たとえば、ソウシハギという、外観がウマヅラハギに似た魚が岸壁や海釣りなどで釣れることがあるそうです。ソウシハギは、通常は相模湾以南の沿岸部に生息していますが、近年、北海道で漁獲されたとの報告があります。この魚の内臓には、パリトキシンという猛毒があります。パリトキシンは熱に強く、加熱しても分解しません。パリトキシンを原因とする食中毒としては、アオブダイやハコフグによるものも起きており、重篤な場合は死に至ることもあります。
 釣りの楽しみのひとつに、釣った魚を料理して食べることがありますが、パリトキシン以外にも魚が持つ毒が知られています。見たことのない珍しい魚やふぐ類などは、釣っても食べないようにしましょう。
(2017年3月号掲載)

食品 注目すべき食中毒有毒植物

 春は、山菜のシーズンです。野山での山菜摘みを楽しみにしていらっしゃる方も多いと思いますが、山菜や野菜に似た有毒植物もあり、毎年これらの誤食による重篤な食中毒が、全国で20件程度発生しています。
 昨年、北海道ではスイセンの葉をニラと間違えて食べた男性が死亡する事故がありました。また、イヌサフランをギョウジャニンニクと間違えて食べて死亡するという事故も、昨年2件発生しています。ほかにも、トリカブトをニリンソウと間違えて食中毒となる事件も毎年起きています。このように、有毒植物による食中毒は重症の場合、死にいたることがあります。
 有毒植物による食中毒を防ぐためには、新芽や根だけで種類を見分けることは難しいということを知るとともに、専門家の指導のもとで正しい知識を身につけることが大切です。また、収穫の際にも有毒植物が混入しないように1つひとつを確認するとともに、種類がはっきりしないものは安易に判断せず、絶対に食べないようにしましょう。
 野生の山菜については、福島第一原子力発電所事故に由来する食品中の放射性物質対策で、東日本の一部の地域で原子力災害対策特別措置法に基づいた出荷制限がかけられています。地元自治体のホームページなどで必ず確認して、出荷制限地域での採取は避けてください。
(2017年5月号掲載)

食品 注目すべき食中毒じゃがいも

 じゃがいもは、米、麦、トウモロコシとともに世界4大作物といわれています。日本では年間250万トン生産され、北海道が生産量の80%を占めていますが、昨年夏の台風の影響で今年は不作となり、ポテトチップスなどの生産にも影響が出ています。じゃがいもの品種には、「男爵」、「メークイン」をはじめ、最近では「インカのめざめ」、「きたあかり」など多彩な品種が開発されています。
 じゃがいもの芽には毒があるということは、よく知られています。芽や光が当たって緑色になった部分、未成熟で小型のじゃがいもには、ソラニンやチャコニンという天然毒が多く含まれています。ソラニンなどによる食中毒では、おう吐、腹痛や下痢などの症状を起こします。ソラニンなどは、調理程度の加熱ではあまり減少しないので注意が必要です。
 じゃがいもによる食中毒は、市販のじゃがいもでは起きることはないでしょう。多くの食中毒は、学校などで栽培した未成熟で小型のじゃがいもや、土寄せが不十分で緑化したじゃがいもなどによるものです。
 じゃがいもを家庭で保管する場合には、日の当たらない風通しの良い場所で保管することが大切です。また、芽の部分は大きめに、緑変した皮は厚めにしっかり取りましょう。お子さんがじゃがいもを食べる場合は、なるべく皮をむきましょう。
(2017年7月号掲載)

食品 注目すべき食中毒ウエルシュ菌

 細菌には、酸素が少ないところで発育する「嫌気性菌」といわれる菌があります。食中毒を起こす細菌のなかでも、5か月の乳児が離乳食として蜂蜜を摂取し死亡するという食中毒の原因菌であるボツリヌス菌やウエルシュ菌などは、嫌気性菌の代表です。
 ウエルシュ菌による食中毒は、昨年の東京都の食中毒発生状況でも、ノロウイルス、カンピロバクターに次いで多くの患者が出ました。ウエルシュ菌による食中毒の特徴は、加熱調理食品が原因となることです。カレー、煮物や麺つゆなど、前日に大量に加熱調理され、大鍋などの大容器に入れたまま室温に放置されて、ウエルシュ菌が酸素のない状態になった食品内部で増殖した事例が多く見られます。このようなことから、一度に大量に調理する学校、旅館や仕出し屋、刑務所などでの発生が多く、喫食者が多数のために大規模な食中毒になりやすいといわれています。ウエルシュ菌食中毒の潜伏時間は、平均10時間程度で、症状は下痢や腹痛が主で軽いことが多く、発熱や嘔吐はほとんどみられません。また、家庭での発生が比較的少ないことも特徴です。
 ウエルシュ菌の食中毒を防ぐためには、前日調理は避け、加熱調理した食品でもなるべく早く食べることです。また、このような食品をやむを得ず保管する場合は、小分けして急速に冷却するとよいでしょう。
(2017年9月号掲載)

食品 注目すべき食中毒カフェイン

 休日の朝のコーヒー、ひと仕事終わった後のコーヒーには格別な味わいがあります。また、抹茶を使ったお菓子やスイーツが、外国人を含めて人気になっています。コーヒーやお茶に含まれているカフェインは、どなたでも知っている化学物質ではないでしょうか。カフェインは、チョコレートにも多く含まれています。薬の成分としても利用され、中枢神経系を刺激して眠気や疲労感をとり、頭の重い感じを和らげる効果があります。眠気防止剤をはじめ、鼻炎薬、かぜ薬、解熱鎮痛薬や栄養ドリンク剤などに配合されています。
 カフェインは、適切に摂取すると心疾患や脳血管疾患などの死亡リスクを抑えるとする研究もあります。その一方で過剰に摂取した場合、中枢神経系の過度の刺激によるめまい、心拍数の増加、震え、不眠が起こります。特に、妊婦やお子さんの過剰摂取には注意が必要です。カフェインの身体への影響は個人差が大きく、国内、海外ともに規制値などは設定されていませんが、WHOでは妊婦はコーヒーを1日3~4杯までと呼びかけるなど、一部の国では摂取の目安量を設定しています。
 エナジードリンクにも、製品によって異なるものの、カフェインが入っています。医薬品の眠気防止剤や風邪薬と一緒に飲むと過剰なカフェインを摂取することになりますので、このような飲み方は止めましょう。
(2017年11月号掲載)

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