イカリホールディングス株式会社 よりそい、つよく、ささえる。/環文研(Kanbunken)

COLUMN

- コラム

「月刊クリンネス」に掲載された
過去の連載コラムの中から、
テーマ別に選りすぐりの記事をご紹介します。
(執筆者や本文の情報は執筆時のものです)

持続可能な開発目標(1)

須賀柾晶

シェアリングエコノミー

 今、インターネット上のSNS(social networking service)などを活用して、ある特定のものを借りたりサービスを提供してもらいたいと望んでいる個人や団体に対して、それを貸したり提供したいと考えている個人や団体を仲介するサービスの利用者が増えています。こうしたシェアによる経済活性化活動のことを「シェアリングエコノミー」といいます。
 シェアリングエコノミーの代表的な事例は、住宅の空き部屋の貸出しを仲介するサービスです。貸主は遊休資産活用による収入が得られ、借主は所有することなく利用できることがメリットです。このように、現代社会の特質であるITの普及とその高度化に伴い、空き部屋や会議室、衣服、カバンなどの持ち物、駐車スペースなど、さまざまな分野でのシェアが活発化しています。物や空間の貸し借りにとどまらず、家事代行、育児代行、イラスト作成などのスキルや時間等のシェアも始まっています。
 シェアリングによる日本での市場規模は、現在約233億円(サービス提供事業者の売上高ベース/2014年度、矢野経済研究所調べ)となっています。現在、世界では2兆円ほどですが、10年後には40兆円市場に成長すると見込まれています。
(2017年7月号掲載)

リサイクルとアップサイクル

 エコロジー活動として、また、主にファッションやデザインなどの分野で最近よく見聞きするようになった言葉に「アップサイクル」があります。これまではエコロジー活動といえば、リデュース(減量・Reduce)、リユース( 再利用・Reuse)、リサイクル( 再生利用・Recycle)の3Rでしたが、アップサイクルは、リサイクルを一歩進化させた考え方といえます。つまり、廃物や使わなくなった物品を、アイデアとデザイン力で新しい素材やより良い製品に変えるなどして、その物自体の価値を再利用前より高めることです。
 たとえば、不要な古着はやがて廃棄されますが、リサイクルの観点から雑巾にするといった再利用方法があります。しかしこれでは、元の洋服と比べてその市場価値は下がってしまい、このことをダウンサイクルと呼びます。それに対して、その古着の布や柄を利用してお洒落なアクセサリーやバッグを作ることができれば、そこに新たな価値が見い出せます。これがアップサイクルです。
 ほかにも、小学校から廃棄された椅子の背板から可愛らしいハンガーを作ったり、ファッショングッズを作る過程で大量に出るアクリル板の端切れでバッジを作ったり、廃車のシートベルトで蝶ネクタイを作ったりするなどの取り組みにも注目が集まっています。
(2017年8月号掲載)

シェアファッション

 ここ数年、カーシェアリングやシェアハウスといった、「ものや場所を個人で所有するのではなく他人と共有する」という流れが急速に広まりつつあります。最近では、衣服などをシェアする取り組みも活発化しています。つまり、シェアすることが現代人のライフスタイルに浸透してきたために、本来であれば個人所有が当たり前だった衣服やカバンに対しても抵抗がなくなってきているのです。そこで誕生したのが、「シェアファッション」です。
 ファッションには、シーズンごとにトレンドがあります。これまで流行に敏感な女性たちは、そのときどきのトレンドに合った衣服やバッグ、アクセサリーなどを購入してきました。しかし、そのようなトレンドはあまりにも短命で、次から次へと新たなものが生み出されていきます。ファッションの分野でも、所有することよりもシェアするということに関心が高まり始めたのは、このためだと思われます。
 そうした変化の中、先行するアメリカに次いで日本においても、2014年ごろからインターネットの仕組みを利用して会員を集め、その会員が月々一定料金を支払うことでファッションのシェアが容易にできるサービスを提供する会社が誕生してきました。そして今後も、これらの事業者が、ファッションをシェアする動きを加速していくでしょう。
(2017年9月号掲載)

エシカル消費

 私たちの毎日の生活は、なんらかの物を買うという消費活動によって成り立っています。皆さんは、買おうとしている物が誰によって、どこでどのように作られたのかを考えることはありますか。
 実は皆さんの消費活動は、世界に大きな影響を与えています。なぜならそれは、世界で起きている「貧困問題」、「人権問題」、「気候変動問題」を解決するための、大切なきっかけになるからです。そのキーワードとして、「エシカル消費」があります。
 エシカル消費とは、「倫理(エシカル)」を考えて商品を選択することです。たとえば、私たちが好んで購入する洋服や下着などのコットン製品の中には、生産過程において開発途上国における過酷な児童労働や大量の農薬使用があり、人々に甚大な健康被害を与えていると指摘されているものもあります。このような状況を考えて、児童に労働させることなく農薬も使用せずに栽培されたオーガニックコットンを選ぶことが、この場合にはエシカル消費といえます。
 また、開発途上国の小規模農家が生産しているものを、買い手が公正かつ適正な価格で購入することは、農家の生活改善と自立を支援します。同時に、農地も破壊されることなく、環境が保全されることにもつながるのです。
(2017年10月号掲載)

世界初「すべて無料のスーパー」

 まだ食べられるものが廃棄される「食品ロス」は、特に先進国において深刻な問題となっています。そうした状況の中で2017年7月、オーストラリアのシドニー市内に、世界で初めて「すべて無料のスーパー」ができました。
 このスーパーは、2004年からオーストラリア各地で支援が必要な人に計6,500万食を提供してきた市民団体「オズハーベスト」が運営しています。野菜市場や一般のスーパー、ホテルなどから、賞味期限前でも処分されてしまったり過剰仕入れのために廃棄されてしまう食品を良い状態のうちに寄付してもらうことで、主に生活に困っている人々を支援していく目的で始められました。
 利用者は、可能な場合にはお金を寄付し、その寄付はほかの人々への食糧支援に使われる仕組みです。開店時間は、平日の午前10時~12時。毎日100人から200人が来店し、店内約2,000点もある食品の大半がなくなるそうです。
 一方、日本においても食品ロス問題は深刻で、農林水産省の資料によると日本の食品ロスは年間約621万トンと推計され、これは全世界の食糧援助量の約2倍になります。日本でもオズハーベストの取り組みを参考に、食品ロスが生まれないような仕組みづくりが求められています。
(2017年11月号掲載)

太平洋サンゴ礁の深刻な状況

 太平洋サンゴ礁の多く、特に沖縄周辺では現在、最大70%に白化現象が見られるという深刻な状況が報告されています。白化がなぜ深刻かというと、サンゴは自組織内に藻(共生藻)を住まわせ、その藻の光合成生産物を受け取って生きています。その共生藻が失われ、透明なサンゴ組織から白い骨格が透けて見える現象が長く続くと、やがて死んでしまうのです。この現象の原因としては、陸域からのゴミや土砂の廃棄・流出による海水の濁りで海中に日光が届かなくなること、地球温暖化による海水温度上昇などが挙げられています。
 そもそも、私たちがサンゴ礁を保全する意義は、主に3つあります。1つ目は、サンゴ礁には魚類や底生生物(ナマコ、貝類)などのさまざまな生物が集まり、地上の熱帯雨林と同様に複雑かつ豊かな生態系を維持する役割があります。調査によると、サンゴが地球の海洋環境に占める割合は1%に満たないのですが、サンゴ礁には海洋生物の推計25%が生息しているとされています。2つ目は、私たちに漁業や観光の資源を与えてくれます。貴重な海洋資源の宝庫となっているのです。そして3つ目は、サンゴ礁が成長すると、陸地を波から守る海中の堤防としての役目を果たします。このように地球の生態系の保全はもとより、私たちの生活面で自然災害の発生を未然に防ぐ働きをしてくれているのです。
(2017年12月号掲載)

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