イカリホールディングス株式会社 よりそい、つよく、ささえる。/環文研(Kanbunken)

COLUMN

- コラム

「月刊クリンネス」に掲載された
過去の連載コラムの中から、
テーマ別に選りすぐりの記事をご紹介します。
(執筆者や本文の情報は執筆時のものです)

持続可能な開発目標(2)

須賀柾晶

SDGs(持続可能な開発目標)

 SDGsとは、「Sustainable Development Goals」の略で、2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された、2016年から2030年までの国際目標です。2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として策定されました。持続可能な世界を実現するための17のゴールと169のターゲットから構成され、「地球上の誰1人として取り残さない」ことを誓うほどの強いメッセージとなっています。
 MDGsが開発途上国のための目標であったのに対し、SDGsは、先進国が自らの国内で取り組まなければならない課題を含む、すべての国に適用される普遍的(ユニバーサル)な目標です。
 MDGsで未達成だった項目を引き継ぐことを前提として、SDGsが主に取り組むべき具体的な内容は、以下の通りです。極度の貧困と飢餓の撲滅、健康的な生活の確保と福祉の推進、すべての人々の生涯学習機会の促進、男女差別の撤廃、水と衛生の確保、適切な雇用の促進、再生可能エネルギーの利用拡大、各国内および各国間の不平等の是正、気候変動の影響軽減、森林の持続可能な管理と生物多様性の損失の阻止などが掲げられ、これらすべてを、2030年までに実現することを目標としています。
(2018年1月号掲載)

ZEH(ゼッチ)

 現在、地球温暖化対策として、二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの家庭での排出量を減らすために、さまざまな取り組みが行われていますが、そのひとつに「ZEH」があります。
 ZEHとは、Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の略で、家の外皮部分の高断熱化の実現および高効率な省エネルギー設備を備え、再生可能エネルギーによって年間に使用する電力消費量が正味ゼロまたはマイナスの住宅のことをいいます。
 2014年4月に政府によってまとめられたエネルギー基本計画では、「住宅については、2020年までに標準的な新築住宅で、2030年までに新築住宅の平均でZEHを実現することを目指す」とされています。また、2015年12月に経済産業省が発表したZEHロードマップでは、大幅な省エネルギーの実現と再生可能エネルギーの導入によって、住宅での年間の電力消費量の収支をゼロにすることがうたわれています。
 そこで環境省は、家庭部門のCO2削減目標達成(2030年度の温室効果ガスを40%削減[2013年度比])のため、戸建住宅のZEH化を進め、分譲集合住宅・賃貸住宅のZEH化のキッカケを作ることを目的として、2018年度の概算要求額として、戸建住宅とともに分譲集合住宅や賃貸住宅のZEH化を支援する事業に、62億円を計上しました。
(2018年3月号掲載)

「健康」をテーマにした電気料金プラン

 2016年4月より、一般家庭向けの電気が自由に選べる電力自由化が始まりました。現在では、100社以上の電力会社が、一般家庭向けに電気を供給しています。これらの電力会社は、もともとの電力会社のほか、ガス会社や石油元売り会社、通信会社、コンビニエンスストアチェーン会社、鉄道会社などが新電力事業者となっており、「ガス+電気」、「通信+電気」などの組み合わせで、さまざまな割引サービスが提供されています。利用者にとっては、ライフスタイルに合わせた割安な電気料金プランが選べるようになっています。こうした状況の中で、最近では健康をテーマにした新たな電気料金プランを提供する事業者も登場しています。
 これは、健康関連の機器およびソフト開発会社と新電力事業者とが提携して始めたサービスで、その事業者の電気利用者が特定の活動計量器を身につけて歩くと、その歩数に応じてポイントが付与され、それによって電気料金が割引かれるという仕組みです。割引額は、付与されたポイントと計算月の電気使用量で決まります。1日1000歩からがポイント付与の対象となり、月間の累計歩数によっては、年間で電気料金が1万円以上安くなります。健康維持につながると同時に、電気料金が安くなるというユニークで画期的なサービスといえるでしょう。
(2018年5月号掲載)

街まるごとスマートタウン

 地球環境問題への対策の一環として、市民のQOL※1 を高めながらも、街にまるごと環境配慮の仕組みを導入する「スマートタウン※2 」への取組みが活発化しています。スマートタウンとは、次世代の交通システムや環境負荷の低い電気自動車、再生エネルギーの活用など、ITや先端の環境技術を駆使して、電力の有効利用や省資源化を実現する街です。
 すでにシンガポールやオランダ、インドなど、世界各地で実証実験が始まっており、日本でも京都・大阪・奈良の3府県にまたがる関西文化学術研究都市(けいはんな学研都市)や、福岡県北九州市、愛知県豊田市などで取り組んでいます。こうした流れの中で今年、横浜市において、実証実験の場としての新たなスマートタウンが誕生しました。
 これは、横浜市港北区綱島地区にある大手電機メーカーの事業所跡地を活用した「Tsunashima サスティナブル・スマートタウン」です。大手電機メーカー、横浜市、大手不動産会社、ガス会社、アメリカの大手ソフトウェア会社など10団体が参画して開発を進めています。同敷地内には、マンションや商業施設のほか、大手ソフトウェア会社の研究開発施設も建設されています。今後は、再生可能エネルギーや水素などの利用率を30%以上まで高めるほか、IT技術を活用したサービスも提供していく計画です。
(2018年8月号掲載)

※1 生活の質
※2 スマートシティともいう

「食品ロス」2030年までに半減

 今の日本には、まだ食べられるのに捨てられている食べ物(食品ロス)が、年間約632万トンあるといわれています。これは年間の食品廃棄物量約2842万トン(2015年度)の2割強に当たります。さらに、飢饉に苦しんでいる人たちへ向けた世界の食糧援助量(2014年度は約320万トン)のおよそ2倍の量です。
 食品ロスは、食品メーカーや卸、小売店、飲食店、家庭などさまざまな場所で発生します。事業所(食品メーカーや卸、小売店など)で発生する主な原因としては、いわゆる3分の1ルールが挙げられます。これは、「加工食品の製造日から賞味期限までの期間を3等分して食品メーカーからの納品期限や店頭での販売期限を設定する商慣習」で、機械的・継続的に食品ロスを生じさせていると指摘されています。また、家庭では調理の際に食べられる部分を捨てることや食べ残し、さらに冷蔵庫などに入れたままにして期限が過ぎてしまう食品の廃棄などが挙げられます。
 こうした事態に対して政府は、国連の持続可能な開発目標(SDGs)に沿って家庭での食品ロスの量を2030年度までに2000年度比で半減させるという数値目標を初めて設定しました。食品ロスを減らすためにも、家庭ではなるべく食品ロスが出ない食べ方への工夫や保存法などの見直しが求められています。
(2018年10月号掲載)

プラスチックストロー問題

 ある調査レポートによると、人類の歴史上でこれまでに生産されたプラスチック製品の総量(1950年から2015年までの間)は83億トンに達し、63億トンがすでに廃棄物となっています。そのうちのわずか9%だけがリサイクルされ、12%は焼却処分されましたが、大部分の79%は埋め立て処分か、あるいは海洋などの自然環境に投棄されたといいます。なかでも海洋汚染に占めるプラスチックごみ問題は、大変深刻な事態です。海洋には年間でおよそ800~1000万トンのプラスチックごみが投棄され、それが海洋生物の生態系を壊しているという現状があるからです。
 こうした事態に対して、米国大手コーヒーチェーンと米国大手ファストフードチェーンが相次いで、プラスチック製のストローを廃止する計画を発表しました。たとえば大手コーヒーチェーンが1年間に世界中で使用するストローは、10億本になると推計されています。それを2020年までに世界中の店舗(約2万8000か所)で全廃すると発表したのです。ストローがプラスチックごみ全体に占める割合は多くありませんが、ほかのプラスチック容器と違ってほぼリサイクルされていません。ますます深刻化が懸念されるなかで、このような企業の取り組みがプラスチックごみ問題解決へ向けた一歩となることが期待されています。
(2018年12月号掲載)

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