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COLUMN

- コラム

「月刊クリンネス」に掲載された
過去の連載コラムの中から、
テーマ別に選りすぐりの記事をご紹介します。
(執筆者や本文の情報は執筆時のものです)

みんなで減らそう!フードロス

東京食品技術研究所 所長(執筆当時) 鈴木達夫

「フードロス」とはなにか

 スーパーやコンビニでの売れ残りや期限切れの食品、家庭や飲食店での食べ残しなど、まだ食べられるにもかかわらず捨てられている食品を「フードロス(食品ロス)」といいます。
 フードロスは大きく分けて、製造、流通や外食産業など、事業系由来のものと家庭由来のものがあります。事業系由来では、製造現場での規格はずれ、流通からの返品や売れ残り、レストランや飲食店などでの食べ残しなどが原因で、年間300万〜400万トン発生しています。
 家庭由来では、食べ残し、調理の際の過剰な除去や期限切れなどによるものが、年間200万〜400万トン発生しています。両者を合わせると年間500万〜800万トンにもなり、国民一人あたりでは、年間約40kgものフードロスが発生していることになります。これは米の年間収穫量(平成25年度は860万トン)に匹敵する膨大な量です。
 食料の生産、流通や販売には、多くの労働力、土地、水、エネルギーなどが消費されており、さらに食品を廃棄するにあたっても、回収や処理・処分の費用が必要です。フードロスは、これらの限りある資源を浪費しているともいえます。
 フードロスを減らし、環境の面からも家計の面からもプラスになるように、一人ひとりが生活を見直す必要があります。
(2014年9月号掲載)

3分の1ルールの見直しを

 食品流通に「3分の1ルール」という商慣習がありますが、この商慣習が、流通過程におけるフードロスの大きな要因といわれています。
 「3分の1ルール」とは、たとえば賞味期限が製造日から6か月の場合、最初の2か月がメーカーからスーパーなど小売りへの納品期限となり、この期間に納品されなかった商品は4か月の賞味期限が残っていても返品されます。次の2か月が、小売りでの販売期限になります。この期限を過ぎると小売りから卸へ返品されますが、これらの返品は取引全体の1%になるといわれています。メーカーへ返品された食品のほとんどは、再出荷されることなく廃棄されています。この厳しい納品期限や販売期限の商慣習は、1990年代に消費者の鮮度に対する関心の高まりを受けて導入されましたが、現在ではフードロスの一因となっています。返品された食品の廃棄費用は、最終的には製品の価格に反映されることも忘れてはなりません。
 メーカー、卸、小売りの大手企業の16社で、この3分の1ルールを賞味期限の2分の1に延長する実証実験を行ったところ、物流センターにおける納品期限切れの食品の割合が減少しました。この取組みを進めると事業系のフードロスの1%から1.4%が削減可能と考えられており、3分の1ルールの早期の見直しが求められています。
(2014年10月号掲載)

家庭からのフードロス

 家庭からのフードロスは、年間200〜400万トン生じています。食べ残し、調理の際に食べられる部分を過剰に除去する、冷蔵庫などに入れたまま消費期限・賞味期限が切れるなどが主な原因です。食材別に見ると、最も多いのは野菜、次いで調理加工品、果実類、魚介類となっています。
 京都市の調査によると、家庭から出る生ごみの39%が食べ残しで、その半分は手つかずの食品との結果があります。さらに、手つかずで廃棄された食品の4分の1は、賞味期限前の問題のないものでした。京都市の試算では、1世帯(4人家族)当たり年間6万円の食べ残しや手つかずの食品を廃棄しています。食品を使用せずに廃棄した理由を調査すると、「鮮度が落ちたり、腐敗したり、カビが生えたりしたため」や「消費期限・賞味期限が過ぎたため」という理由が多くなっています。まさに食品の買い過ぎ、在庫管理の不徹底といえます。これでは、家計にも環境にも負荷がかかります。
 家庭でのフードロスを減らすには、食材を「買い過ぎない」、「使い切る」、「食べ切る」ことが大切です。家庭の消費量や冷蔵庫の中の在庫などを十分に考えて、特売などで値段が安いといっても買い過ぎないなどの日頃の行動がフードロスを減らし、結果的に家計にもプラスとなります。
(2014年11月号掲載)

フードロスを減らすために

 「もったいない」という世界に誇れる日本独自の言葉があります。
 みなさんも、宴会やパーティのあとの大量の食べ残しを見て、もったいないなと感じた経験があると思います。食堂やレストランでのお客様の食べ残し量を統計で見てみると、昼食では3.2%ですが、結婚披露宴では13.7%、宴会では10.7%、宿泊施設では14.8%となっています。会食の際にはお店の方にあらかじめボリュームを確認するなどして、食べ切れる量を注文したいものです。お店側も、ハーフポーション(一人前の半分程度の量)の注文などに柔軟に応じてほしいものです。また一部の外国では、外食時の食べ残しを家庭に持ち帰る「ドギーバッグ」も普及しています。
 自動車や電気製品など日本製品の品質は世界一といわれ、消費者は食品にも高い品質を求めています。しかし消費者である私たちが、食品に対して過度の鮮度や品質を求めるあまり、フードロスが生じていないかをもう一度、日々の生活の中で見直す必要があります。日本では、年間500〜800万トンという米の収穫量にも匹敵する膨大な量のフードロスが生じています。このことを忘れずに、食品関係の企業も含め、食に関わるすべての人が、それぞれの立場からフードロスを減らす取り組みを着実に進めていくことが大切です。
(2014年12月号掲載)

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