イカリホールディングス株式会社 よりそい、つよく、ささえる。/環文研(Kanbunken)

COLUMN

- コラム

「月刊クリンネス」に掲載された
過去の連載コラムの中から、
テーマ別に選りすぐりの記事をご紹介します。
(執筆者や本文の情報は執筆時のものです)

今さら聞けない?食品衛生のウソホント(1)

イカリ消毒株式会社

清掃・洗浄の頻度はどうやって決める?

 「作業台は製造終了後に洗浄殺菌しましょう」、「壁面は手の届く範囲を週1回、高所は半年に1回清掃します」など、食品工場では清掃・洗浄を実施する頻度が決まっています。ではこの頻度は、どのように決めているのでしょうか。ご家庭の場合で考えてみましょう。調理器具やお皿などは、汚れたら洗います。食事をするテーブルも、使用する前後に拭くでしょう。つまり、食品が直接触れるところや食品に近いところは、汚れていればもちろん、目に見える汚れがなくても清潔に保つことが必要です。食品工場ではさらにバイキンによる汚染などが起こると困るので、製造機械や使用備品、作業台などは使用の都度あるいは製造終了後に毎日、洗浄することが決められているのです。
 ご家庭の床はどうでしょう。毎日掃除機をかける方もいるでしょうが、「週1回」とか「ホコリが目立ったら」掃除するという方が多いのではないでしょうか。けれど食品工場では製造を行えば毎日床や排水溝が汚れますので、製造終了後に毎日洗浄するのが理想です。床や排水溝を洗浄しなかったことで汚れやヘドロが溜まると困るのが、昆虫の発生です。このような場所で発生する昆虫は、卵から成虫になるまで10〜14日間はかかります。したがって、その期間より短い日数(たとえば1週間に1回)で洗浄を徹底すれば、昆虫の発生は確実に減らせます。
(2015年1月号掲載)

水だけで手洗いすると逆効果ってホント?

 工場に入場するときには通常、洗剤を使用して手洗いを行います。
 1日に何度も工場を出入りする場合には、この”洗剤での手洗い“が面倒くさくなる人はいませんか。洗剤で手を洗うことは、本当に必要なのでしょうか。
 逆に、水だけで手洗いを行うとどうなるのでしょう。実は水だけで手洗いをすると、手のひらの表面のバイキンの数は増えてしまいます。手のひらは汚れていないように見えても、実際には皮脂汚れなどが付着しています。この皮脂汚れは水だけでは完全に除去できません。そのため水だけで手洗いを行うと、これらの皮脂は中途半端に除去され、皮脂汚れの中に潜んでいるバイキンが表面に現れてしまうのです。
 もうひとつ、水だけで手洗いするとバイキンが増える理由があります。それは手のひらのシワです。人の手のひらのシワの中には、バイキンが潜んでいます。水だけで手洗いを行うとそれらのバイキンがシワの中から手のひらの表面に浮き出てしまいます。こういった理由から、水だけで手洗いを行うと手のひらの表面にバイキンが増えることもあり、逆効果になることもあります。
 工場に入場するときには洗剤を使用して、きちんと決められた基準で手洗いを行いましょう。
(2015年2月号掲載)

ダンボールを製造現場に持ち込んではいけないの?

 ダンボールは、原料・包材・製品を入れる容器として、食品工場で広く使われています。しかし「製造現場に持ち込んではいけない」といわれます。なぜなのでしょうか。絶対にダメなものなのでしょうか。
 原料が入っているダンボールは、食品工場に持ち込まれるまでの間に多くのモノや人に接触するため、表面には細かなゴミなどが付着しています。そのまま製造室に持ち込むことは異物の原因を持ち込むことになります。そうせざるを得ないのであれば、表面を拭く、エアで吹く、粘着ローラーを掛けるなどして異物を除去するのが望ましいでしょう。これらによって毛髪混入クレームが減少したという事例もあります。またダンボール自体が、紙粉(しふん)と呼ばれる細かなカスを発生させることも覚えておきましょう。このため、クリーンルームなど衛生要求度の高い現場には持ち込むことはできません。別の容器に入れ替えることが必要です。
 ダンボールは湿気を帯びやすく、濡れてしまった場合に長時間に渡って水分を保持する性質があります。そのためカビの発生源になり、中空(ちゅうくう)構造がゴキブリなどの昆虫の絶好の隠れ家にもなります。これらはダンボールを長期間放置しない、下敷きなどに転用しないことで防げます。
 製造現場にダンボールを持ち込まない方がよいのは確かですが、そうせざるを得ない場合には、危険性を踏まえて適切な処置を施しましょう。
(2015年3月号掲載)

マスクは、なぜ必要なの?

 食品を取り扱う施設の従業員の皆さんにとって、マスクはなぜ必要なのでしょう。花粉症対策や風邪予防で日常生活でもマスクをする人が増えていますが、食品施設でのマスク着用の目的は次の通りです。
・ツバや鼻水が飛ぶのを防ぐ
 食品製造中におしゃべりをすると、ツバが飛ぶ可能性があります。不潔ですし、さらに鼻の中には黄色ブドウ球菌という食中毒菌が存在する可能性もあり、製品に付着すると大変危険です。
・鼻毛の落下を防ぐ
 髪の毛に比べると圧倒的に数は少ないのですが、鼻毛にも注意が必要です。昨今はこのような短い毛でも異物混入苦情につながるケースが増えています。
・手で鼻や口を触るのを防ぐ
 作業中に、つい自分の口や鼻を触ってしまう方は多いものです。前述したとおり、口や鼻は清潔なものではありませんので、触った手には食中毒菌や雑菌が付着することになります。
 いかがでしょうか。マスクをするのは煩わしいかもしれませんが、つけることには明確な理由がありますので、食品製造現場の皆さん1人ひとりが、しっかりとマスクをしましょう。
(2015年4月号掲載)

爪ブラシって有効なの?

 工場に入るときには、異物やバイキンを工場内に持ち込まないために入場ルールが決められています。そのルールのひとつが、手洗いです。手洗いのときには、爪に付いているバイキンを除去するために「爪ブラシ」を使います。水で石鹸をすすぎ落とす前に、爪ブラシで爪と指の間をきれいにするのです。
 では、この爪ブラシはどれほどの効果があるのでしょう。
 それは、爪ブラシの保管状況によって大きく変わります。爪ブラシは多くの人が使用するので、使用後の保管状態が悪いとブラシがバイキンでいっぱいになってしまいます。そんな汚れた爪ブラシを使用すると爪の間にバイキンをすり込んでいることになり、効果は出ません。爪ブラシを使用したらしっかり水で汚れを落とし、逆性石鹸※ などに浸けて保管しておく必要があります。また、1週間に1回は次亜塩素酸ナトリウムなどの殺菌剤を使用すると清潔に保てます。爪ブラシを使う場合は、その管理をしっかりと行わなければ逆効果なのです。
 爪を短く切っている人であれば、爪ブラシを使わないというのもひとつの方法です。その場合、爪を立てて手のひらにこすりつけて洗うと爪と指の間のバイキンを除去することができます。ただし、手が非常に汚れている場合には、たとえ爪が短くても爪ブラシを使う方が効果的です。
(2015年5月号掲載)

※ 通常の石鹸より洗浄力は劣るが、殺菌効果のある石鹸

昆虫が好きな光や嫌いな光ってある?

 防虫資材には多くの種類があり、特に「防虫ランプ・防虫フィルム」など”光“をコントロールする商品はよく用いられています。これらの商品では、なぜ虫が集まらなくなるのでしょうか。「このランプの黄色は、虫が嫌いな色なんだ」と言われる方がいますが、それは間違いです。正しくは「虫が反応する光をカットしている」からです。
 多くの昆虫、特に飛ぶ虫の多くは光に反応して行動する性質を持っています。これを昆虫の「走光性」と呼び、飛行や帰巣に用いています。本来は太陽光などの自然光がその拠り所ですが、ライトのような人工光に、間違えて集まってきてしまうのです。
 光コントロールの防虫資材は、昆虫が最も集まりやすい(反応しやすい)光の波長域(360nm)をカットしたもので、私たち人間が見ている光の波長とは異なることが知られています。人の目には明るさに大きな影響はなくても昆虫にとっては非常に暗く見えるという仕組みで、逆に捕虫器に用いられている誘虫ランプは、この波長域を際立たせたものです。
 一見すると虫が好き、嫌いなように見える光も、実はこのような違いがあるのです。この光の研究は今も進められており、最新の結果ではハエ、ハチ、カメムシなどの昆虫について、ブルー、グリーンに集まりにくいということがわかっています※。
(2015年6月号掲載)

※ イカリ消毒・大成E&L 田近ら、2014日本環境動物昆虫学会年次大会

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