イカリホールディングス株式会社 よりそい、つよく、ささえる。/環文研(Kanbunken)

COLUMN

- コラム

「月刊クリンネス」に掲載された
過去の連載コラムの中から、
テーマ別に選りすぐりの記事をご紹介します。
(執筆者や本文の情報は執筆時のものです)

老化のサイン(1)

クリンネス編集室

目の老化サイン

 年齢を経るに従って、近くのものに焦点が合わせにくくなり、近くを見る視力(近方視力)が落ちてきます。これを老眼、あるいは老視といいます。老眼は、加齢現象(老化)に伴うもので個人差はありますが、一般的に40歳代後半から自覚するようになります。老眼は、眼鏡によって近方が見えるように矯正するしかありませんが、最近は遠近両用のメガネやコンタクトレンズも開発されていますので、これらを利用すれば、メガネをかけ替えたりする面倒も改善されるかもしれません。
 老眼以外にも、加齢に伴って白内障や緑内障が増えてきます。白内障にはさまざまな原因が関係していますが、体質的なもののほかに、近年、紫外線の影響が指摘されるようになってきました。水泳やスキーなど紫外線の強い屋外で活動するときなどは、若いときから紫外線防護のメガネを着用するなどして、目を保護したいものです。
 緑内障はあまり自覚症状がないままに進行し、重症になると失明の恐れもある病気です。また、加齢黄斑(おうはん)変性症という病気も高齢者に多く見られます。進行性で視力を低下させますが、最近は新しい治療法も開発されています。視力の低下を自覚したときには、これらの病気の兆候の可能性もありますので、一度眼科を受診して検査を受け、老眼であればメガネの処方を書いてもらうとよいでしょう。
(2012年1月号掲載)

歯の老化サイン

 加齢とともに歯も老化していきます。乳幼児の歯が白いのに比べ、老人の歯は黄褐色を帯びています。これは飲食物に含まれる色素や煙草のヤニ、フッ素などが歯の表面に付着したり、象牙質やセメント質が加齢とともに肥厚(ひこう)することが原因と考えられます。しかしこれらの変化が歯そのものの機能に大きく影響することはありません。そういう意味では、歯は老化に強い器官であるともいえるでしょう。
 ところが、人間は加齢によって歯を失うようになります。虫歯によって歯を喪失することもありますが、歯槽膿漏などの歯周病によって歯が失われる場合も多いのです。歯肉組織(歯茎)は加齢によって退縮していきます。その結果、歯の根元の部分が露出し虫歯になりやすくなることもあり、歯の喪失につながりやすくなります。歯肉組織の老化には個人差がありますが、これには口腔ケアが大きく影響しています。
 「8020(はちまるにいまる)運動」でいわれるように、80歳になっても自分の歯を20本残すことが、歯のみならず全身の健康を守るうえで重要です。若いときから正しい歯磨きと口腔ケアを行うことにより、虫歯や歯周病、歯肉の老化を防いで「8020」を達成することは十分可能です。そのためにも、かかりつけ歯科医などから指導を受けて、日常的に正しい歯と口腔のケアを心がけることが大切です。
(2012年2月号掲載)

耳の老化サイン

 加齢に伴って耳が聞こえにくくなってくることを、老人性難聴といいます。老人性難聴を自覚する時期には個人差があり、早い人では50歳くらいから耳が遠くなったと感じますが、70歳、80歳になっても聴力低下が気にならない人もいます。
 老人性難聴の特徴は、低音域よりも高音域から聴力の低下が始まることです。最初は日常会話にあまり不自由は感じないのですが、まず女性の声や子音が聞こえにくくなります。人間の耳は騒がしい場所でも会話している相手の声を選別して聞く弁別(べんべつ)力という能力を持っていますが、この弁別力も低下してきます。聴力と弁別力が低下する結果、聞き返すことが多くなります。残念ながら、老人性難聴には有効な治療法はありません。ただ最近は性能のよい補聴器も開発されていますから、耳鼻咽喉科を受診して、他に耳の病気がないかどうかを確認したうえで、耳に合った補聴器を調整してもらうとよいでしょう。
 耳の神経はデリケートなので、長期間にわたり大きな音にさらされていると老人性難聴が早く始まるといわれています。若いときから耳は大事にしたいものです。また、耳への血液循環が悪い場合も老人性難聴が進むと考えられます。糖尿病や動脈硬化など生活習慣病を予防することも、老人性難聴の予防や悪化防止に繋がると思われます。
(2012年3月号掲載)

肌の老化サイン

 赤ちゃんの肌はぷるんぷるんして張りがあるのに対し、歳をとると肌は張りを失って乾燥し、シワも多くなります。加齢に伴って肌も老化していきます。しかし肌をよく観察すると、人によって、また身体の部位によって老化の程度に差があります。
 肌の老化に影響を与える要因はいくつかありますが、もっとも影響が大きいものは紫外線です。高齢になると、普段から表に出ている顔や手ではシワやシミが目立つようになりますが、服に隠されて陽の当たらないお尻や大腿の皮膚は、若い人とそう変わらない状態に保たれています。この違いは、日光に含まれる紫外線を長年にわたって浴び続けた影響が大きいと考えられます。また、皮膚の乾燥も肌の老化を促進します。皮膚の表面は分泌される皮脂や汗によって乾燥から守られていますが、高齢者では分泌能力も低下し、肌が乾燥しやすくなります。
 加齢によって皮膚を構成する細胞自体も老化し、肌が薄くなってくることもシワやたるみの原因となります。加齢そのものは防ぎようがありませんが、紫外線や乾燥などの外的要因はコントロールすることができます。夏は過度の日焼けを避け、冬は肌の乾燥を防ぐために保湿クリームなどを利用するのがおすすめです。また、喫煙や偏った食生活は細胞の老化を早めます。生活習慣病の予防は肌の老化防止にもつながります。
(2012年4月号掲載)

髪の老化サイン

 加齢にともなって、髪の毛も老化してきます。抜け毛が増える、白髪が増える、頭髪が薄くなるなど、外から見えるだけに髪の毛の変化は年齢を感じさせます。白髪や禿頭(とくとう)の原因については未解明の部分もあるのですが、加齢に伴うホルモンバランスの変化も大きく影響しています。しかし、生理的な老化以外のダメージも、髪の毛には大きく影響します。
 大きな要因のひとつは、髪の栄養不足です。髪の毛はタンパク質でできています。無理なダイエットなどでタンパク質不足になると髪の毛が細くなってきます。また、亜鉛、マグネシウムやビタミンなどの不足も髪には大敵です。また、それらの栄養素が毛根に行き渡るためには良好な血流が保たれる必要があります。動脈硬化の予防も血流の確保に重要です。日頃から適度な運動で全身と頭皮の血流をよくしておきましょう。
 紫外線もタンパク質を変性させ、髪の毛のダメージの原因となります。紫外線の強い季節には帽子や日傘で直射日光を避ける工夫も必要です。
 そのほか、過度なドライヤーの使用は髪の毛にダメージを与えるだけでなく、頭皮の血流を悪くします。睡眠不足や精神的なストレスも血液循環を悪くして髪の毛にもダメージを与えます。
 適切な頭髪や頭皮のケアとともに、栄養、運動、休養に心がけて、生活習慣病を予防することが髪の毛の老化予防にも繋がります。
(2012年5月号掲載)

胃の老化サイン

 歳をとると、消化機能も落ちてきます。なかでも胃は食物を体内に取り込む過程で最初の本格的な消化を担う器官ですから、加齢の影響を直接感じとることも多いといえます。加齢現象そのものを完全に抑えることはできませんが、加齢に伴う胃の衰えを促進する要因が明らかになってきました。そのひとつがピロリ菌です。
 高齢になると胃の粘膜が衰えて、胃液を分泌する細胞が減少した状態になることがよくあります。これを萎縮性胃炎と呼びます。従来は加齢に伴う現象と考えられていたのですが、近年の研究で萎縮性胃炎の発生にはピロリ菌という病原菌の持続感染が関係していることが明らかになってきました。ピロリ菌は胃酸に対して抵抗性を持っており、胃潰瘍の原因にもなります。胃がんの発生に関与している疑いも強く、最近はピロリ菌を除菌して胃潰瘍を治療したり、胃がん検診にピロリ菌検査を組み合わせている例もあります。
 上水道が完備しておらず、衛生水準の低かった時代に小児期を過ごした現在50歳代以上の方にピロリ菌の感染者が多いことがわかっています。歳のせいで胃の機能が衰えたと感じたり、胃炎や胃潰瘍で悩んでいる人は医療機関で相談して、一度はピロリ菌感染の有無を確かめてみてはいかがでしょう。
(2012年6月号掲載)

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