イカリホールディングス株式会社 よりそい、つよく、ささえる。/環文研(Kanbunken)

COLUMN

- コラム

「月刊クリンネス」に掲載された
過去の連載コラムの中から、
テーマ別に選りすぐりの記事をご紹介します。
(執筆者や本文の情報は執筆時のものです)

イルカが教えてくれること(4)

日本ウエルネススポーツ大学 特任教授・HAB21イルカ研究会 代表 岩重慶一

番外編 ~カリブ海のイルカたちと戯れる

 マイアミから客船で訪れたカンクンは、カリブ海に面するユカタン半島の先端に広がるメキシコの観光目的に開発された美しく広大なビーチリゾートです。ユカタン半島は石灰岩でできているため、大地に降った雨が地下に溜まり、川となって海に注ぎます。鍾乳洞を通る川下り観光コースは、洞窟の中を探検気分でシュノーケリングすることができるので、白と青の透明な魅惑の場所として人気があります。
 予約していた「イルカと泳ぐツアー」では、10人程度がひとつのグループとなり、ライフジャケットをつけて準備します。自分からは絶対にイルカに近寄らないことを念押しされ、こちらに来てくれるのを静かに待って触れ合うのです。イルカの気持ちに任せて遊ぶ感覚はなかなかの感動でした。「君は誰なの?」と覗き込まれるときの可愛らしさ。お互いに認めあった後に、イルカはジャンプし、背中に乗せてもらいました。まるで水中ショーの主役になった気分でした。
 カンクン周辺の海と森は国立公園になっていて、さらに南にあるシェルハは、マヤ語で水の生まれるところを意味し、石灰岩でできた海辺には色とりどりの魚や亀そしてイルカの泳ぐ小さな施設があります。水を汚さないように、入り口に日焼け止め用品を預かる小屋があるなど、自然を守る意識の高さに驚きました。
(2019年5月号掲載)

赤ちゃんを人間に育てる

 子どもを産み育てることは、イルカも人間も哺乳動物として遠い昔から行ってきました。しかしながら現在、人間社会では毎日のように幼い子どもを抱えた親御さんのストレスによる悲しい事故が報道されています。人間の赤ちゃんは、霊長類のヒト科の動物として命を受けますが、それ相応の保育環境がなければ生きていくことはできません。「赤ちゃんを人間に育てる」ことは、簡単なことではありません。
 赤ちゃんは、身体の生理的仕組みは生まれたときにほぼできていますが、心の仕組みはまったく未熟です。赤ちゃんを人間にするために、心の仕組みを成長させるために、私たち大人がしなければならないことはたくさんあります。今のような情報社会では、ともすると情報に振りまわされて周囲と自分を比較したり、親御さん自身が子どもの育て方がわからなくなっているようです。どうすれば、保育環境を維持して、赤ちゃんをヒトから人間にすることができるか、よく考えたいものです。
 人間はこれまで、保育園や学校の制度が未熟だった時代から、赤ちゃんを立派な人間に育てあげてきました。私はイルカを長年研究し、その子育てを見てきましたが、親として子どもに何をすべきかという本能や愛情は、イルカにも人間にも、もともと生きものとして備わっていると感じることがとても多いです。
(2019年7月号掲載)

番外編 ~言葉以外のコミュニケーション

 イルカも犬も人間の赤ちゃんも、周囲の環境に反応すると脳の神経を通して認知し、感情を表現します。その過程を経て、見分ける力(共感能力)を身につけていきます。私が飼っていた犬は、よくアクビをしました。散歩に連れていくのが遅くなってイライラしているときやオシッコを我慢して緊張しているときなどに、よくしていたように思います。
 動物行動学では、周囲の微妙な状態や気持ちを言葉ではなく動作やしぐさで表現し、自分自身や他者を落ち着かせて穏やかな状況にしようとする動きを「カーミング・シグナル」といいます。たとえば、飼い主が夫婦喧嘩を始めて険悪な雰囲気になったとき、犬がしきりにあくびをすることがあります。犬にとって家族の絆が壊れることは大きなストレスですから、なんとかそれを和らげようとしているのです。
 イルカにも言葉がありません。人間の赤ちゃんも、すぐには言葉によるコミュニケーションがとれません。ですから、さまざまなシグナルを出して、表情や動作で的確かつ素直に自分の気持ちを表現しています。目・耳・口元も、気持ちが表れやすいところです。なにかに好奇心を持っていたり警戒したりしていると、それぞれの感覚器官が変化します。赤ちゃんも動作の一つひとつに、どのような意味があるのかを読み取ることで、より深くコミュニケーションできるようになります。
(2019年8月号掲載)

オアフ島の美しい風景

 ハワイのオアフ島にあるラニカイビーチは、ハワイ語で「天国の海」という意味です。オアフ島で代表的なビーチはどこですかと聞けば、おそらくほとんどの方がこの浜の名前を挙げるでしょう。
 モクルア島とモック・イキ島というふたつの小さな島を右手に見ながら泳ぐ光景は、まるで絵葉書のようであり、静かな水面から透明な海の中をのぞけば、そこはもう別世界です。しかしそれだけではなく、サンゴや岩場の海藻を食べるウミガメ(ハワイ語でホヌ)の親子も一見の価値があると思います。ハワイではホヌは、神の使いとして保護され愛されています。さらに、ビーチ沿いを泳ぐイルカの群れとの出会いを胸ふくらませながら待ち、イルカたちがやってきたときの高揚感は、一生の思い出となることでしょう。ラニカイビーチは、カネオヘという町の海洋センターのイルカの島とつながっていて、バンドウイルカたちが広大な自然の中にすんでいます。この土地は、ハワイ王朝カメハメハ大王の伝説が残る場所でもあります。
 私はこれまで、オアフ島のラニカイビーチでイルカやウミガメたちの行動を観察してきました。皆さんもこの海を訪れたならきっと、ラニカイビーチの大自然の力に癒され、生きものたちの美しさと穏やかさに心を打たれることでしょう。
(2020年6月号掲載)

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