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COLUMN

- コラム

「月刊クリンネス」に掲載された
過去の連載コラムの中から、
テーマ別に選りすぐりの記事をご紹介します。
(執筆者や本文の情報は執筆時のものです)

さまざまな依存症

クリンネス編集室

さまざまな依存症

 特定の事象に心を奪われて、それを避けようとしても避けられない、あるいは避けるのが著しく困難な状態に陥ることを「依存」といいます。医学的に「依存症」という場合には、「特定の物質」の使用をやめられない状態をいうことが多いのですが、最近は特定の行為やプロセスに関してやめられない状態に陥ることも「依存症」と呼びます。
 依存には精神的依存と身体的依存があり、代表的なものはアルコール、薬物、ギャンブルなどです。たとえば、コーヒーが飲みたくてしかたがない人がコーヒーを断っても、通常は身体的不調は訴えません。この場合は精神的依存といえますが、薬物依存では薬物を中断した場合に禁断症状が出ることが多く、これを身体的依存といいます。また、「物質への依存」と「プロセスへの依存」に分類することもあります。アルコールや薬物依存は前者であり、ギャンブルは後者です。
 対象がなんであれ、依存症になると本人や家族に困ったことが起こるようになります。仕事が続かない、金銭的に行き詰まる、家族や周辺との喧嘩が絶えない、体調を崩す、などです。このような状態に陥れば、依存症といえます。依存症から一人で脱却するのはなかなか困難ですので、一人で抱え込まずに専門医療機関や保健所などに相談し、治療を始めることで回復も望めます。
(2020年10月号掲載)

なぜ依存症が問題なのか

 アルコール依存症や薬物依存症、ギャンブル依存症など、特定の物質や行動・プロセスなどに対して、精神的にも身体的にも依存する状態に陥いる「依存症」ですが、他人に迷惑をかけなければ問題はないのではないか、という考え方もあります。依存症の状態にあることによって本人や家族が苦痛を感じている場合、また、経済的な問題などで日常生活を営むことが困難になっている場合には、当然すぐに改善が必要な状態だと判断できますが、経済的に余裕があるようなケースではこれらの問題が顕在化せず、本人や家族が依存症に気づいていなかったり、依存症を疑っても治療の必要性を感じないといったこともあります。
 依存症になるのは、アルコールや薬物などの依存対象物質の摂取やギャンブルなどの依存対象行為を行うことによって、脳内に快楽物質が放出されて快感・喜びにつながり、これを繰り返すことにより、快感や喜びを求める回路が脳内に出来上がるからだと考えられています。結果として依存行動を止めることが困難になり、家族や周辺との軋轢を起こし、仕事を失い、体調を崩すようなことになります。多くの人は金銭的にも行き詰まりますが、たとえ経済的に余裕があっても本人や家族の健全な社会生活に悪影響を及ぼすことになります。それを避けるためにも、依存症の予防や早期の治療が重要です。
(2020年11月号掲載)

依存症の治療

 アルコール、薬物、ギャンブル、ゲームなど、いろいろな依存症がありますが、いったん依存症の状態に陥ってしまうと、依存対象を摂取したり依存行動をとることによって脳内に快楽を感じる回路ができると考えられ、そうなると本人の意思や努力だけで依存症を克服することは難しくなります。自分自身が、あるいはご家族が依存症の状態にあると疑う場合には、自分一人や家族だけで抱え込まずに医療機関や保健所、精神保健福祉センターなどの専門機関に相談し、適切な助言を得ながら治療を開始しましょう。
 アルコール依存や薬物依存では、肝機能など身体的異常が合併していることも多く、その治療の必要もあって入院させる場合もあります。入院すると、依存対象から距離を置いた環境で治療を行うことができます。一方、通院治療では、仕事や家庭生活を続けながら日常生活のなかで依存対象から距離を置く訓練を行います。また、医療機関ではありませんが、それぞれの依存症に特化した回復施設に入所したり、通所して回復への努力を続ける方法もあります。「断酒会」のような自助グループを利用する方法もあります。依存症は慢性疾患ですので、回復するまでにはある程度の期間を要します。医療機関や専門機関の支援を受けながら、患者さんに合った方法を選ぶことが必要です。
(2020年12月号掲載)

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