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COLUMN

- コラム

「月刊クリンネス」に掲載された
過去の連載コラムの中から、
テーマ別に選りすぐりの記事をご紹介します。
(執筆者や本文の情報は執筆時のものです)

認知症の予防(2)

介護問題研究家 中村和彦

ラジオを聴いて認知症予防

 神経外科医の板倉徹先生(和歌山県立医科大学名誉教授)によると、脳を鍛えるにはラジオが最適だとのこと。ラジオは聴覚情報しかなく、それを補うために脳全体が活発に働くといいます。頭の中でさまざまなことを想像する、いわゆる場面想像をすることが、脳をより一層活性化させるそうです。テレビは映像があるため場面想像という過程がなく、ラジオほど活性化されません。ラジオを聴くと特に脳の前頭前野(ぜんとうぜんや・おでこの辺り)がよく活性化します。前頭前野は、創造性、やる気、実行能力、感情のコントロール、決断などと関係の深いところです。認知症で萎縮しやすい部分でもあり、ラジオを聴くことで認知症を予防できる可能性があります。
 板倉先生によると、おすすめの番組は天気予報だとか。意外に思われるでしょうが、天気予報は地図なしで地域を想起し状況を想像するなど、想像力が広がるからだと考えられます。雲や太陽、雨といった自然の情景が次々に浮かんで、脳は相当に活性化されるのだと思われます。
 運動が認知症予防に効果的であることはすでに判明していますが、ラジオを聴きながら適度な運動をすると、より効果が期待できそうです。ただし周囲への注意が散漫になりがちですので、公園などの安全な場所で行うようにしてください。
(2015年8月号掲載)

歯の少ない人は、認知症のリスクが高まる?

 国立長寿医療研究センターの松下健二研究グループは、歯周病がアルツハイマー病に及ぼす影響に関する研究結果を発表しました。マウスを使った実験では、歯周病を発症させたマウスは発症していないマウスと比べ、明らかに認知機能障害が進んでいたということです。
 食物を噛むことで脳が刺激され、思考や記憶を司る機能が活性化されます。東北大学が行った高齢者の歯の調査では、健康な高齢者の場合、残っている歯が平均14.9本であるのに対し、認知症の人は9.4本。歯が少ない人ほど、記憶や学習能力に関わる海馬(かいば)や、意志、思考に関わる前頭葉(ぜんとうよう)の容積が少なくなっていたそうです。
 残っている歯が20本以上ある人に対し、歯がない、あるいは入れ歯も入れていない人が認知症になる可能性は1.9倍です。また、よく噛んで食べる人に対して、あまり噛まない人のリスクは1.5倍という研究結果もあります(神奈川歯科大学調査)。
 歯が少ないと、噛んでも脳へ伝わる刺激が少なくなります。こうしたことから、日頃から歯を大切にし、虫歯や歯周病のある人は早めに治療することが大切です。歯にはなんの問題もないという人も、脳の活性化を意識して食事はよく噛んで食べるように心掛け、定期的に歯科医院に通うなどのケアをしましょう。
(2016年2月号掲載)

「1日に1.4kmの歩行」で認知症予防

 アメリカのピッツバーグ大学の研究で、1日に歩く距離が脳の老化に影響することが判明しました。同大学によると、1日に1.4~2km、1週間で9~14km歩いている人は、脳の老化が遅くなることがわかりました。1週間で9~14km歩いている人は、歩いていない人と比べて大脳の表面を覆う灰白質(かいはくしつ)の量が多いそうです。灰白質は認知症の原因とされる物質アミロイドβ(Αβ)の分解を促進してくれますが、老化とともにどんどん縮んでいきます。
 このように脳の老化を遅らせることは可能ですので、ぜひ、1日に1.4~2km、1週間で9~14km歩くことを実行してみませんか。これくらいの距離であれば、30分ほどの時間で歩けるでしょう。決して無理難題ではないと思います。
 短い距離の移動でもすぐに車に頼ってしまう方は、2回に1回は歩くようにして、少しずつ習慣づけていくことをお勧めします。最初からたくさん歩こうとは思わず、徐々に時間を増やすようにして、じっくりと目標に達するように考えてみてはいかがでしょう。
 ちなみに1日2km以上歩いても、脳の老化予防の効果は変わらないとのことです。無理のない距離を設定して、楽しく歩くことが脳にとって大切だと考えられます。
(2016年10月号掲載)

認知症になりにくい職業

 どのような仕事をすると認知症の発症を予防したり遅らせたりすることができるのかという研究結果が、カナダ・トロントで開かれたアルツハイマー協会の国際会議で発表されました。その仕事というのは、複雑な思考を伴う職業や、人とのコミュニケーションを頻繁に行う職業とのことで、該当するのは、弁護士、教師、技術者や医者などでした。人と接する職業は、ものやデータを扱う職業よりも障害耐性があるということもわかりました。
 他人と頻繁にコミュニケーションをする仕事とは、メンタリング(対話と気づきによる指導)に関わる職業のことを指し、前述した以外にもソーシャルワーカー、スクールカウンセラー、心理学者、牧師などは、複雑な脳の機能を使っていると考えられます。逆に、単純な作業を繰り返す職業は認知症への抑制が低く、発症しやすいといえます。アルツハイマー協会では、スーパーなどでのレジ打ち、倉庫の荷降ろし作業などを挙げています。
 コミュニケーションの機会は、私たちの身の回りにも多く存在します。会社に勤務していれば上司や部下との接点がより多くなる所属や立場がありますし、家庭であれば近所の人たちとの交流もあるでしょう。
 大切なのは、周囲の人と積極的に交流することだと思います。
(2016年11月号掲載)

糖尿病は認知症発症リスクが2倍に

 糖尿病の人は、アルツハイマー病の発症率が高いといわれています。原因は、糖尿病を発症するとインスリンが不足するからです。インスリンには認知症の原因である悪玉タンパク質のアミロイドβの分解を助ける役割があり、これが不足するとアミロイドβが脳内に蓄積され、認知症の発症を促すと考えられています。糖尿病が原因で認知症の発症率が2~4倍にもなるという九州大学の研究報告もありますが、糖尿病にならなければ認知症をかなり防ぐことができるともいえそうです。
 太っている人がアルツハイマー病の発症率が高いという調査報告もありますので、糖尿病予防も含めて生活習慣を改善すべきでしょう。予防策として、まずはきちんと噛むこと。噛むことは広範囲に脳を使います。飲み物で流し込むような食事は噛むことが少なく、脳への刺激が少なくなります。最近の日本人の食事を見ていると、柔らかい食べ物が多く、あまり噛まないで食事をしている人が多いように思います。認知症対策として、噛むために硬いものを適度に加えてみるのもよいでしょう。
 また、認知症予防には和食がおすすめです。理想的な献立は、玄米、納豆、卵、魚が基本であると考えられています。若い方でも、できればバランスの良い和食を中心にして、しっかりと噛んで味わいながら楽しんで食事をしていただきたいと思います。
(2016年12月号掲載)

生活習慣の改善で認知症予防

 日本生活習慣病予防協会は、認知症の多くは生活スタイルを改善し、健康的な生活をおくることで予防が可能であると伝えています。その中で9つの生活スタイルが認知症の発症要因の35%を占めることを突き止めたという、医学誌「ランセット」に発表された報告書を紹介しています。
 9つの要因とは、若年期の早期教育の不足、中年期以降の高血圧、肥満、高齢期の難聴、喫煙、うつ病、運動不足、社会的な孤立、糖尿病です。若い頃から認知症の早期教育を受け、中年期の難聴、高血圧、肥満を改善することで、認知症の発症率が20%低下するとのことです。
 認知症は、軽度から重度まで段階があります。日本にはMCI(軽度認知障害)に該当する人が400万人いるといわれていますが、この段階で早期発見し、生活習慣を改善することが重要です。MCIは日常生活には大きな支障が出ていない、一見正常な状態の人たちです。国立長寿医療研究センターは、MCIと診断された人のうち、46%は正常に戻ったと報告しています。
 一般的に認知症は治らないと考えられていますが、これは症状が進んでしまった人のことであり、初期段階であれば治る、あるいは進行を抑えることは十分可能です。最近は若年性認知症の方が増えているので、40代、50代のうちに生活習慣を見直してみてはいかがでしょうか。
(2018年1月号掲載)

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