Kanbunken 環境文化創造研究所

COLUMN

- コラム

弊所発行の「月刊クリンネス」に掲載された
過去の連載コラムの中から、
テーマ別に選りすぐりの記事をご紹介します。
(執筆者や本文の情報は執筆時のものです)

片づけられる子どもに育てる(3)

整理収納アドバイザー一級認定講師 長野ゆか

言葉かけの主語を「私」にする

 片づいている環境が、時間的、経済的、精神的、安全や健康の面からもお子さんにたくさんのメリットをもたらすことは、これまで見てきた通りです。けれど声をかけるときに、「片づけないと、探し物で時間がなくなるよ」、「忘れ物をするよ」という伝え方では、子どもは「別にかまわないから放っておいて」と反発するでしょう。その理由のひとつは、この言葉かけの主語が「あなた」であり、子どもに対して「あなたは片づけなさい」というニュアンスで伝わってしまうからです。
 では、主語を「私」に変えるとどうなるでしょう。「私は、あなたが探し物の時間のために焦ってほしくないから、片づけてほしい」、「私は、あなたが忘れ物をしないと思えたら安心」となります。これならば自分自身の気持ちの表現であり、子どもを責めることにはなりません。
 子どものためにと思って「片づけなさい」と言っているつもりでも、実は子どもを心配したくない自分のためでもあるのではないかと気づくと、これまでより少しだけ、気持ちに余裕が生まれます。そして、子どもの片づけを見守り、サポートすることができるようになるでしょう。
 子どもの片づけ力を伸ばすには、親自身が自分と子どもとのかかわり方を客観的に見つめて変わる力を持ち、実際に変わることができるかどうかが、とても大切です。
(2020年1月号掲載)

「勝手に部屋を片づけないで」と怒る子ども

 子どもの片づけで深刻な相談になるのは、思春期のお子さんのケースです。子ども部屋は足の踏み場もなく、布団の上もスマートフォンや教科書でいっぱい。畳んで渡した洗濯物も崩れているので見かねて片づけると、子どもは「勝手に触るな」と怒る。けれど、「片づけなさい」と言っても自ら片づけるわけもなく、一体どうすればいいのでしょうと大きなストレスを抱えている親御さんもいます。
 こんなときは、まずは放置してくださいとアドバイスします。お子さんに、「日々の生活ができているのは、親御さんの片づけのおかげだ」ということに気づいてもらうためです。いったん放置すれば部屋はさらにひどい状態になりますが、ここは我慢比べです。ただし子ども部屋といっても我が家の一室ですから、汚すぎる状態を親御さん自身が我慢できないのなら、「あなたのため」ではなく、「私が嫌だから」と割り切って子どもに伝え、片づけてもよいでしょう。散らかるのがストレスか、子どもとの関係性がストレスか、原因を見極めることができます。
 あるケースでは部屋を放置した結果、子ども部屋から異臭が発生し、子どものほうから初めて助けを求めてきたそうです。双方にたくさんの気づきがあり、その後、親子の会話が増えたとのこと。子どもの成長のために、時には手も口も出さず見守ることが必要なのは、片づけも同じです。
(2020年3月号掲載)

片づけが得意な大人が気をつけること

 私は、企業研修で働く人に向けて片づけ方の研修をしています。受講者は40代以上の男性が多いのですが、ときおり「うちの娘は20歳も過ぎているのに、片づけもできないんです」と言われることがあります。こういう場合、言っているご本人は几帳面であることが多く、罪深いなといつも感じます。
 そもそも、片づけの定義や方法を学校も親も教えません。ですから、子どもたちには学ぶ機会がありません。大人たちは、「大人になれば自然に片づけができるようになる」と思っているので、自分たちが教えてこなかったことにすら気づいていない場合が多いようです。ご自身は感覚的に片づけができるのですがそこには再現性がないために、お子さんは同じようにできません。理論で教えるからこそ具体的なアドバイスが可能であり、片づけができるようになるのです。
 小学校で片づけ講座をした時、ある女の子が「自分は片づけ『すら』できない」と泣いて私のところへ来たことがあります。冒頭の男性が思い浮かびました。彼女はきっと普段から、否定的な言葉をかけられているのでしょう。けれど実は、片づけはあるべき場所にものがあるだけで「元の場所に戻せているから使えたね」と、子どもを褒めることから始まります。まずは大人が、意識と行動を変えていくことが大切です。
(2020年5月号掲載)

感謝と自立、そして尊重

 子どもの片づけ能力が高いことのメリットは、「いつもきれいな部屋で過ごせる」だけではありません。精神的なメリットや効率的な時間の使い方はもちろん、安全・安心、健康、良好なコミュニケーションなどの効果が一生得られます。加えて、片づけを学ぶ過程からも大切な気づきがあります。
 たとえば、片づいた引き出しの中に何気なく入っているシャツ1枚。そこにどれだけの手間がかかっているでしょう。子どもがそのことに気づけば、日々当たり前に生活できていることへの感謝が生まれます。シャツ1枚から対象を広げることができれば、学校や社会のインフラ、生活に対しても同様に感謝できるようになるでしょう。
 自立の力も身につきます。そもそも、このシャツ1枚を持つか持たないかを考えることから始まり、自分で物の価値を判断し、リスクを考えられるようになるからです。また、誰かと一緒に片づけを進めれば、「相手の価値観を受け入れる」ことと直面します。「自分にはゴミに見える紙1枚も、思い出の詰まった大事なものかもしれない」と相手に寄り添い、想像する。相手を否定せず、話を聞いて受け入れ、解決に向け工夫改善する。そんな尊重の心も身につくはずです。片づけは、子どもの人生を応援する大きな力なのです。
(2020年7月号掲載)

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