Kanbunken 環境文化創造研究所

COLUMN

- コラム

弊所発行の「月刊クリンネス」に掲載された
過去の連載コラムの中から、
テーマ別に選りすぐりの記事をご紹介します。
(執筆者や本文の情報は執筆時のものです)

沖縄のいきもの事情(1)

特定非営利活動法人バイオメディカルサイエンス研究会 常任理事 前川秀彰

沖縄の虫事情

 沖縄の虫の話を、少しさせていただきます。リュウキュウアブラゼミは、姿かたちは本土のアブラゼミとそっくりです。ただし、鳴き方の最後だけが違います。クマゼミは、本土と外見も鳴き方も同じようです。クロイワツクツクは、ツクツクボウシと同じ仲間ですが、鳴き方はまったく違い情緒がありません。イシガキニイニイは、絶滅危惧種になっています。南西諸島固有の鳥のような鳴き方をするオオシマゼミは、千葉県にも出現しているそうです。関西地区の樹木を植樹する際に根ごと運んだことにより、関東地方にクマゼミが広く生息するようになったのと同じ理由でしょう。
 近年の温暖化に伴い、九州地方では沖縄のハラボソトンボが広がりつつあるという話も聞きます。ツマムラサキマダラのように、東南アジアから沖縄に飛来して定着したものがあり、定着年月までわかっています。気候が合えば、移動や移植された地域で生息域を広げるのでその地域の生態系に影響を与えることにもなります。モンシロチョウは逆に本土から沖縄を経由して台湾に移動し、キャベツの大害虫になっています。ウリの大害虫のウリミバエは台湾から偏西風に乗って常に飛翔しており、沖縄で飛来が観測された場所に放射線照射した不稔(ふねん)オス※ をその都度散布して子孫ができないようにしているそうです。
(2015年11月号掲載)

※ 子どもができないような処理をしたオス

チョウの擬態

 トカラ列島の中之島(なかのしま)以南に生息するシロオビアゲハのメスは、毒チョウのベニモンアゲハに擬態しています(ベイツ型擬態※1 )。オスの模様はそのままで、メスは擬態により結果的に鳥などから守られることになります。オスは模様が違っても、同種のメスを認識して交尾を行います。黄色い斑紋があるベニモンアゲハが南から北上する前は、同じ毒チョウで黄色い斑紋がなく北から南に移動したジャコウアゲハに擬態していたのが、ベニモンアゲハが多くを占める状況になるとそれに擬態するためにパターンが変わってきました。
 どこで認識をして羽の模様を変えることができるのか、不思議です。擬態の分子機構の解析は進んでおり(東京大学大学院新領域の藤原晴彦教授のグループ)、特定の遺伝子座※2 が関与していると報告されています。今後おおいに期待が持てます。
 南西諸島以南に生息するカバマダラという毒チョウにツマグロヒョウモンのメスが擬態しています。本土に生息するメスも擬態しますが、こちらの防御効果は疑問です。日本一大きいチョウのオオゴマダラは優雅に飛翔する姿が観察されますが、これも毒チョウだからです。毒を持っているチョウの胴体だけを外して食す鳥がいると聞きますと、鳥もさるものだと感心します。
(2015年12月号掲載)

※1 毒をもつチョウの模様を警告色として利用し、捕食されないようにする擬態
※2 染色体やゲノムにおける遺伝子群の位置

いろいろなクモ

 昆虫ではない、クモの話です。
 本土にも棲息するジョロウグモは、その名の通り雌が巣を張って獲物を捕獲します。9月から10月頃、カラフルな雌の巣の中に、小さくて色も目立たず、お腹の小さいクモを見ることができます。これが雄です。風の通り道などの小枝や葉を支えにして、何匹もの”つがい“が隣同士に巣を張っています。沖縄が南限の大型グモです。
 沖縄が北限のクモは、オオジョロウグモです。脚を広げると10cm以上になる日本最大のクモで、その巣は頑丈で、時に小鳥が掛かることもあるそうです。このクモに噛まれたことのある学生さんの話では、かなり痛いそうです。雄は脚までいれても1cmに満たない大きさです。ジョロウグモの雄は巣に1頭ですが、オオジョロウグモは5頭もいるときがあります。体の色は真っ赤で、まったくの居候(いそうろう)です。ジョロウグモの巣の端に銀色に光る、これまた5mmくらいの小さなクモがいることがあります。大きさはオオジョロウグモの雄に近いのですが、色が違うので調べてみると、これが本物の居候のイソウロウグモでした。
 ジョロウグモは小さい餌が網に掛かっても、いちいち獲りにいきません。そこでイソウロウグモがこれ幸いと家主の隙を狙って、おこぼれにあずかるという次第です。うまく出来ています。
(2016年1月号掲載)

狩蜂(かりばち)

 狩蜂の話をしましょう。狩蜂は本土にも生息していますが、私は沖縄へ行くまでは知りませんでした。狩蜂の中でもベッコウバチの仲間は、主にクモを狩ります。キバネオオベッコウやツマアカベッコウは、特にアシダカグモを狩ります。昼間に、飛び歩きながら草むらや石垣の中を探しています。見つけると麻痺させて巣まで運び(これが大仕事で一生懸命道路を横切ってでも運びます)、卵を産み付けます。孵化(ふか)した幼虫の餌として、麻痺したまま生かされます。寄生バエ・寄生蜂が、蝶や蛾の幼虫に産卵して子の餌にするのと同じです。
 クモが相手というのが、面白いです。アシダカグモは巣を張らないので狩りやすいですが、巣を張るクモを狙う狩蜂は体に油を塗ってクモの巣に引っ掛からないようにするものがいるそうです。アシダカグモは夜行性で本土でも家の中に住んでゴキブリなどを食べています。大きくて脚が速く、ジャンプするので怖がられています。
 沖縄では屋外のホオグロヤモリの幼体を襲って食べることがあります。ヤモリは虫を捕って家の中にいるので家の守り神で”家守“ですが、家の中にも糞をするのが困りものです。沖縄のヤモリは鳴く種類が多く、最初鳴き声を聞いたときは虫かと思ってしまいました。エアコンの室外機に巣を作るので、ヤモリが入れないようにしてあるのが沖縄仕様です。
(2016年2月号掲載)

草木と虫たち

 沖縄では1年中、なんらかの花が咲いています。植物の種類も単位面積当たり、本土の約50倍あるそうです。たしかに移入種を含め、いろいろな種類の植物が共存しています。これは、昆虫の種類も同じく30倍以上あることと無関係ではないでしょう。
 沖縄では、マメ科の植物が多く観察されます。花が咲いた後、やたらと多くのタネが出来ることになりますが、こんなにタネを作ったらそこら中に広がるかと思いきや、そうなりません。これには理由があります。
 たとえば沖縄には、自生しているオジギソウ(花は可憐できれいなのですがタネが出来ると見栄えが悪い)のタネにつくホソヘリカメムシがいます。幼虫はアリに擬態しているそうです。また、マメ科ではありませんが、大きな実の中に、綿に包まれた、たくさんのタネが出来るトックリキワタやキワタノキにつくアカホシカメムシがいます。タネがすべて植物に成長すると大変なことになりますが、カメムシがタネから養分を吸い取ることでそれを阻害し、バランスが取られています。
 また、マメ科のギンネムは中南米原産で、荒れ地でも育つために終戦後の焼け跡に植えられました。どんどん増えて、当初の目的は達成されました。なぜ増えたのかという理由のひとつは、ミモシンという有毒アミノ酸を含むために単胃(たんい)の家畜が食べないからでしょう。
(2016年3月号掲載)

モモタマナを好む生きものたち

 モモタマナは、台湾、中国南部から旧世界の熱帯域に広く分布し、日本では琉球列島と小笠原に分布するシクンシ科の高木で、20cm以上の葉がつき、沖縄では発酵茶としても利用されています。4cmくらいの実がなり、オオコウモリが好んで食べることでも知られています。実はかなり硬く、簡単には中身を取り出せません。オオコウモリがこの実を割って中身を食べるためには、強靭な顎あごを持っている必要があります。
 外来種は思わぬところで見つかります。モモタマナの葉に鳥の羽毛が付いていると思って気にしていなかったのですが、よく見ると羽毛ではなく何かの幼虫でした。それも頭に自身が脱皮したときに残った頭の殻をすべてつなげて持っている変わった虫でした。調べようがなかったのですが、形状や植物の名前で検索を繰り返したところ、やっと見つかったのがモモタマナコブガという蛾の幼虫です。インド、ネパール、ブータンに分布しており、沖縄では1996年に新種登録されています。
 オオコウモリは、寒緋桜(かんひざくら)の実も食べます。私も食べてみましたが、まったく苦くて、熟していても食べて美味しいものではありませんでした。しかしオオコウモリは平気で食べるようです。味覚とはどういうものかと、考えてしまいます。桑の実は黒く熟すと美味しいので、よく採って食べていました。
(2016年4月号掲載)

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