Kanbunken 環境文化創造研究所

COLUMN

- コラム

弊所発行の「月刊クリンネス」に掲載された
過去の連載コラムの中から、
テーマ別に選りすぐりの記事をご紹介します。
(執筆者や本文の情報は執筆時のものです)

水と健康(1)

クリンネス編集室

風呂水のレジオネラ属菌

 2014年6月に、埼玉県のスーパー銭湯の利用者がレジオネラ肺炎で亡くなったと報道がありました。原因は、浴槽水の中で増えていたレジオネラ属菌と考えられています。その菌を含んだ、空気中に舞う細かい水滴のエアロゾル※ を吸い込んで発症したと見られます。
 レジオネラ属菌は、土壌や池、沼など自然界のどこにでもいる細菌です。住宅の建築現場や道路の工事現場など地面を掘り起こすところでは、土ぼこりと一緒にレジオネラ属菌が空気中に漂うといわれています。人の体にも付いていると考えてよいでしょう。レジオネラ属菌は入浴施設の窓から、あるいは人の体に付着して浴槽水の中に入り込む可能性があります。浴槽水は約40℃で、細菌の繁殖に最も適した36℃前後の温度です。消毒の塩素の濃度が下がったり清掃が十分に行われなかったりすると、菌が増える可能性があります。循環ろ過式の浴槽の場合、営業終了後に配管中に滞留水が生じれば、配管、ろ過器、集毛器などに菌の固まりの生物膜ができることがあります。この生物膜はバリアに守られて、その内側で菌の増殖が進みます。生物膜の成長が、リスクの高い状態を作り出すことになります。
 公衆浴場や旅館・ホテルなどでは、レジオネラ症対策のために保健所の指導のもと、入浴施設の衛生管理に努めています。
(2015年1月号掲載)

※ 気体中に浮遊する微少な液体または固体の粒子

クリプトスポリジウム

 平成8年(1996年)に、埼玉県入間(いるま)郡越生(おごせ)町で水道水を飲んだ約8800人が下痢などの症状を起こした事故がありました。町営水道水が、汚染源でした。原因は、水源に入りこんだ微生物の原虫のクリプトスポリジウムです。クリプトスポリジウムは、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ、ネズミなどの腸管に寄生していて、排泄物とともに環境中へ放出されます。感染した人の排泄物が原因となる二次感染の場合もあります。クリプトスポリジウムが水道水源の河川や地下水などに混入して、十分な処理が行われないと末端の水道蛇口まで運ばれてしまうのです。
 アメリカやヨーロッパでは、1980年代中頃から頻繁に水系汚染による集団発生が報告されています。1993年にはアメリカ・ミルウォーキー市で40万人を超える住民が罹患しました。特徴的なのは、10個未満~130個程度のわずかな経口摂取で感染するとの報告があることです。潜伏期間3~10日後の主な症状は、水様下痢、腹痛、倦怠感、食欲低下などです。数日から2、3週間続いた後、自然治癒します。
 水道水については、通常の凝集・沈殿・濾過(ろか)の浄水処理ではクリプトスポリジウムを完全に除去することが難しいとされています。通常の塩素消毒も効果がありません。浄水場では、膜処理などを行い、水の濁りの濁度を0.1度以下に保つことで汚染を防いでいます。
(2015年2月号掲載)

大腸菌と大腸菌群

 水道法の水質基準では、し尿汚染がないかどうかを確認する項目として大腸菌があります。人や動物の腸管から排出される菌であり、感染症伝搬(でんぱん)を未然に防ぐための検査項目といってもよいでしょう。
 大腸菌の中で、腸管出血性大腸菌O-157は過去に死亡例があります。1990年に埼玉県浦和市の幼稚園で、井戸水を原因としたO-157の集団発生があり、園児2人が死亡しました。この大腸菌は、ベロ毒素を産生して致死的に作用します。体内に入ると、3~5日間の潜伏期のあとに激しい腹痛、水様便、血便などがあります。
 感染を防ぐために、飲料水の殺菌は欠かせません。水道法では、水道末端で消毒に有効な遊離残留塩素濃度が、1リットルあたり0.1mg以上とされています。
 公衆浴場の浴槽水の検査項目には、検査の簡便さなどから採用されている大腸菌に似かよった菌まで調べる大腸菌群数があります。ある自治体の水質基準は1ミリリットルあたり1個以下です。便による浴槽水の汚染がないかを見るためのものです。入浴者が臀部(でんぶ)をよく洗わないで浴槽に入った場合、大腸菌群が検出されることがありますので、入浴者が体を洗ってから浴槽を利用するというマナーの徹底が必要でしょう。浴槽水の殺菌には、水道水と同様に塩素剤が用いられています。
(2015年3月号掲載)

浄水場と塩素

 薬品の塩素剤は、病原性の微生物を殺したり動きを抑えたりする消毒や殺菌のために幅広く使われています。水道水をつくる浄水場では、大きく沈殿、濾過(ろか)、消毒の3行程があり、消毒の行程で塩素剤が投入されています。これにより、水系の感染症であるコレラ、赤痢などの伝搬(でんぱん)を防ぐことができます。水道法の基準では、水道蛇口の末端で消毒に有効な遊離残留塩素濃度を1リットルあたり0.1mg以上維持することになっています。東京都の水道水では、通常、末端で0.4mg程度になるように塩素の濃度管理がされています。
 一方、「おいしい水」の観点から考えると、塩素の臭いが強い水道水は味を損ねてしまいます。そこで、おいしい水をつくるために、水道蛇口に活性炭入り浄水器をつけて塩素を除去する方法もあります。また、東京都水道局ではカビ臭や塩素臭を抑える目的で、浄水場で通常の処理とオゾン処理、生物活性炭処理を組み合わせています。
 浄水場での塩素の使用は、消毒のほかに沈殿前の前塩素処理がありますが、これは河川水や地下水などの原水に含まれる鉄・マンガンの除去のためです。原水に塩素剤を加えると、原水中に溶け込んでいる鉄やマンガンが酸化されて不溶性の形に変わり、その後、鉄・マンガンは、沈殿、濾過の行程の中で取り除かれるのです。
(2015年4月号掲載)

おいしい水と成分

 ミネラルウォーターをお店で買って飲むことは、今ではめずらしくなくなりました。以前はペットボトルの水にお金を払うことに抵抗を感じる人もいましたが、水道水とは違う味に付加価値を見い出したのかもしれません。
 「おいしい水とは何か」を定義したのが、昭和60年当時の厚生省の「おいしい水研究会」の報告書です。ここでは、水質要件として7つを挙げています。水をおいしくさせる項目には、蒸発残留物、硬度、遊離炭酸、水温があります。水の味を損なう項目には、過マンガンカリウム消費量、臭気度、残留塩素があります。
 水質要件は、1リットルあたりの具体的な数値が示されています。蒸発残留物は30~200mgで、主にミネラルの含有量になります。量が多いと苦味や渋味が増して、適度に含まれるとコクのあるまろやかな味がします。硬度は10~100mgで、カルシウム、マグネシウムの含有量になります。硬度の低い水はくせがなく、高いと好き嫌いがわかれるといわれています。遊離炭酸は3~30mgで、含有されていると水にさわやかな味を与え、多いと刺激が強くなります。水温は、最高20℃以下です。水温が高くなると、おいしく感じられません。おいしいとされる地下水は、一般的に水温が15℃前後になっています。
(2015年5月号掲載)

プールと感染症

 気温が高くなる6月からは、プールの季節です。これからは、天候に左右されない屋内プールはもちろん、青空の下で気持ちよく泳ぐことのできる屋外プールに行く機会も増えるでしょう。
 プールでは、水を介して感染症が伝搬する可能性があります。代表的なものは、プール熱と呼ばれる咽頭結膜熱です。アデノウイルスが病原体で、このウイルスの潜伏期間は2~14日間、発熱、喉の腫れ・痛み、目の充血・痛み・目やになどがあらわれます。患者から出たウイルスは、プールのなかで一度に50人、100人に感染する可能性があるのです。アデノウイルスの別型が伝搬するのが、はやり目といわれる流行性角結膜炎です。まぶたの腫れ、目やに、流涙(りゅうるい)などの症状が出ます。また、エンテロウイルス、コクサッキーウイルスが伝搬するのが急性出血性結膜炎です。出血をともなう目の病気で、まぶたの腫れ、流涙、目やにが見られ、潜伏期間が1~3日間と短いのが特徴です。
 感染症の伝搬を防ぐために、プール水には消毒の塩素が入れられています。ウイルスを抑えるために有効な遊離残留塩素濃度は、1リットルあたり0.4mg以上です。感染予防のためには、遊泳後のうがい、手洗い、洗眼などを徹底し、タオルの共用をしないことも大切です。もちろん発症している場合には、遊泳を控えてください。
(2015年6月号掲載)

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