Kanbunken 環境文化創造研究所

COLUMN

- コラム

弊所発行の「月刊クリンネス」に掲載された
過去の連載コラムの中から、
テーマ別に選りすぐりの記事をご紹介します。
(執筆者や本文の情報は執筆時のものです)

注目すべき食中毒(3)

東京食品技術研究所 所長(執筆当時) 鈴木達夫

赤痢

 2018年10月、山梨県で仕出し業者が宿泊施設などに納入した食事などを原因として、赤痢菌による患者数約100名の大規模な食中毒が発生しました。赤痢菌による食中毒は7年ぶりです。さらに都内では、10月に保育園で、11月には幼稚園で赤痢の集団発生がありました。この両園での発生は、食中毒ではなく集団感染と考えられています※ 。再発防止のためにも、これらの食中毒や集団感染の感染経路解明が待たれます。
 赤痢は日本において、衛生状態の悪かった戦後に猛威をふるい、年間患者数10万人、死者数2万人という時期もありました。しかし衛生状態の改善や抗生物質の普及などの医療の進化とともに、現在では著しく減少しています。近年は毎年100名程度の発生となり、主として東南アジアなどの海外旅行先での感染が多くなっています。赤痢の主な症状は、発熱、腹痛、粘液を含む下痢が数日間続きます。血便を伴わない下痢だけの場合も多く、気づかず感染を広げてしまう場合もあります。
 赤痢は微量の菌により感染を起こすことから、東南アジアなど赤痢の流行地への海外旅行では、生水や非加熱の食品などを避けましょう。旅行中や帰国直後に下痢、嘔吐(おうと)や発熱などの体調の悪化があった場合には、早急に医療機関を受診することが大切です。その際には、海外に渡航したことをしっかりと医師に伝える必要があります。
(2019年3月号掲載)

※ 飲食物を介して赤痢を発症した場合は食中毒といわれ、保育所などで赤痢患者から直接感染し集団で発生した場合は集団発生といわれる。
食中毒の場合は食品衛生法で、集団発生の場合は感染症法での対応となる。

腸炎ビブリオ

 魚介類を原因とする食中毒の代表例に、腸炎ビブリオがあります。
 1960年代から80年代には日本における食中毒原因菌の筆頭でしたが、低温流通の普及や魚介類の適正な取扱いなどにより、腸炎ビブリオを原因とする食中毒は激減しています。
 しかし2018年の夏、ある回転すしチェーンの21店舗で、うにを原因食と推定される患者数197名という大規模な食中毒が発生しました。海外産のうにに付着していた腸炎ビブリオが、原材料の室温放置により増殖したり、従業員の手指や調理器具などを介した二次汚染、宅配などでの不適正な温度管理など、複数の要因により大規模な食中毒となりました。
 腸炎ビブリオは沿岸海域に生息し、海水温が20℃を超えると急速に増殖します。また、ほかの細菌と比較しても増殖のスピードが速く、菌が付着した食品などを室温に放置すると急速に増殖して食中毒の原因となります。潜伏期間は平均12時間ほどで、短い場合は2時間で発症することもあります。主な症状は、激しい腹痛、下痢、発熱などです。高齢者の場合には、脱水症状を起こすことがあります。
 腸炎ビブリオの食中毒予防としては、魚介類は調理の前にしっかりと水道水で洗浄します。短時間でも室温に放置せず、冷蔵庫で保管します。手指やまな板、ふきんなどを介した二次汚染にも注意が必要です。
(2019年7月号掲載)

食中毒の発生状況

 平成30年の全国食中毒発生状況が、厚生労働省から公表されました。事件数は1330件、患者数は1万7282名で、ここ数年は事件数・患者数ともに横ばいの状況です。事件数で第1位となった原因はカンピロバクターで、患者数ではノロウイルスでした。カンピロバクターは鶏肉の生食や加熱不十分などが主な原因であり、ノロウイルスは特に冬場における不十分な手洗いなどによって人から人へ感染します。
 食中毒による死者は3名でした。すべて植物性自然毒を原因とし、2例2名はイヌサフラン、1名はキノコの1種のニセクロハツによるものです。イヌサフランによる食中毒では、この10年間に8名の死者が出ています。春にはイヌサフランの葉がギョウジャニンニクやギボウシなどの山菜と間違われることが多く、秋には球根をジャガイモ、ニンニクやタマネギと間違えて食中毒の原因となっています。
 発生件数は少ないのですが、これらの有毒植物やキノコ、さらにはフグ毒など自然界の毒による食中毒は毎年発生し、死者も数多く出ています。有毒植物ではイヌサフラン以外にも、ニラと間違えたスイセンによる食中毒やニリンソウと間違えたトリカブトによる食中毒などで死亡事件が報告されています。知らない野草や山菜などは「採らない、食べない、売らない」、そして「人にあげない」を守りましょう。
(2019年9月号掲載)

毒キノコ

 実りの秋は、マツタケをはじめキノコの収穫期です。しかし、毒キノコによる食中毒も秋の訪れとともに急増します。2018年の食中毒の統計をみると、9月から11月の3か月を中心に、全国で1年間に事件数21件、患者数43名、死者1名も発生しています。死亡した高齢の男性は、自分で採ったニセクロハツという猛毒のキノコを食用のクロハツと間違って食べたことにより悪心、嘔吐(おうと)や下痢などの消化器症状とともに、筋肉痛や呼吸困難を起こし死に至りました。
 キノコによる食中毒では、ヒラタケやシイタケと似ているツキヨタケ、シメジ類と似ているクサウラベニタケ、さらにテングタケなどが間違えやすい毒キノコです。キノコの鑑別は素人では難しく、食用と確実に判断できないものは「絶対に、採らない、食べない、売らない、人にあげない」ことを守りましょう。万が一、自分で採ったキノコを食べて体調に異常を感じた場合には、すぐに医師の診断を受けてください。その際、キノコの残品も持参すると治療の参考になります。
 毒キノコの種類によって食中毒の症状は、(1)猛毒型で、はじめの胃腸症状から肝臓や腎臓の重篤な障害を起こし死に至る場合もあるもの、(2)食べた後比較的早い時間に神経障害、幻覚や知覚異常を起こすもの、(3)嘔吐や下痢などの胃腸症状を起こすものに分類されます。
(2019年11月号掲載)

黄色ブドウ球菌食中毒

 「食中毒」と聞くと、飲食店での食事や市販の弁当による食中毒をイメージしがちですが、平成30年の統計では、1330件の食中毒事件のうち163件(224名)が家庭で発生しています。これらは保健所に届けられた事件だけですので、その数倍から数十倍の食中毒が家庭で起きているといわれています。さらに、ふぐの素人調理、毒キノコや有毒植物の誤食など、重篤な食中毒事例も多く発生しています。
 家庭で起きやすい食中毒のひとつに、黄色ブドウ球菌食中毒があります。黄色ブドウ球菌は、健常な人の鼻腔や手指などに広く生息し、特に手荒れや化膿した傷口には多く存在しています。黄色ブドウ球菌が食品中で増殖すると、エンテロトキシンという毒素を生成し、これが食中毒の原因となります。エンテロトキシンは高熱にも強い毒素で、通常の調理では分解されません。原因食としては、おにぎりや弁当などが多く、手についた菌が食品を汚染します。潜伏期間は短く30分から6時間で、主な症状は激しい吐き気、嘔吐、下痢などです。
 おにぎりやサンドイッチなど、素手で調理する場合には特に注意が必要です。おにぎりを握るときは、ラップなどを使って食品に直接触れないようにしましょう。特に手指に傷などがある場合には、手袋をする必要があります。家庭にも調理用の使い捨て手袋を常備したいですね。
(2020年3月号掲載)

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