Kanbunken 環境文化創造研究所

COLUMN

- コラム

弊所発行の「月刊クリンネス」に掲載された
過去の連載コラムの中から、
テーマ別に選りすぐりの記事をご紹介します。
(執筆者や本文の情報は執筆時のものです)

食品にまつわるトラブルから学ぶ(3)

元東京都杉並保健所 食品衛生監視員 谷口力夫

飲食店とインターネット情報発信

 総務省の情報通信白書※ によると、インターネットの個人利用率は約81%で、すでに生活に身近なインフラとなっていることがわかります。
 今から10年以上前のことです。あるフレンチ料理店の営業を直ちに停止させるべきだとの電話が保健所にありました。その理由は、「当日の店のブログによると、店内の冷蔵庫が壊れてしまったことと鮮魚の鯛が届いたとの記載があるにもかかわらず、この店は通常営業を行おうとしており、衛生上問題がある」とのことでした。
 当該店の保健所への営業許可申請時の施設配置図によると、店舗内に冷蔵庫は4台ありましたが、情報収集を兼ねて営業者に連絡してみました。すると、故障した冷蔵庫はすでに修理の手配が済んでおり、生鮮品はほかの冷蔵庫で支障なく取り扱われていることがわかりました。
 翌日、店の営業者が冷蔵庫の修理完了の連絡に来てくれましたが、そのときの話では、以前から同店に対してストーカーのような利用客がいるため、今回の通報者についても思い当たるとのことでした。
 今ではお店の情報発信手段として、インターネット(ホームページ、ブログ、SNSなど)は広範に活用されています。しかし、ネット上に公開される情報は不特定多数の人たちが閲覧可能であるため、特別な配慮も必要になります。
(2020年2月号掲載)

※ 総務省の情報通信白書(平成30年版)
 http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/h30.html

自動販売機の弁当が腐っていた

 社会環境の変化や新たな技術革新に伴い、AI(人工知能)、サービス用ロボット、IoT※ などを事業活動に取り入れる企業が増えています。
 ある利用者が弁当の自動販売機でおにぎりと惣菜入り弁当を購入して容器の蓋を開けたところ、具材がくずれて異臭もひどい状態でした。
 この弁当の具材の細菌検査を行ったところ、1g当りの一般生菌数は15億個で完全に腐敗状態でした。自動販売機には商品保管用の冷凍庫と加熱用の電子レンジが組み込まれており、販売時に冷凍品がレンジに搬送されて加温、提供されていました。自動販売機内の残品に衛生上の問題は発見されず、機械の動作自体にも異常は認められませんでした。
 当該弁当は自動販売機内で一度解凍された後に搬送部分で詰まり、その時点で機械は自動的に販売を停止しましたが、時間の経過とともに腐敗が進んだものと考えられました。数日経過した後に商品の装填担当者が機械の復帰操作を行いましたが、廃棄すべきこの弁当を自動販売機の冷凍庫内に戻したために腐敗弁当の販売に至ったものと推察されました。
 本事例では、自動販売機の管理マニュアルと従事者教育の不十分が指摘されました。しかし、いくら管理マニュアルを整えてもヒューマンエラーを完全になくすことはなかなか困難です。最新の技術革新が、人間のミスを起こしにくい環境づくりにも役立つことを期待したいものです。
(2020年3月号掲載)

※ Internet of Things の略。身の周りのあらゆるものがインターネットにつながり便利になる仕組み

刺激臭のする弁当店の割り箸

 日本国内の割り箸の消費量は年間194億膳※1 で国民1人当たり約150膳になりますが、そのほとんどは海外で製品化されています※2 。
 ある初夏の日、保健所に割り箸とメモ書き入りの封筒が郵送されてきました。購入した弁当を食べているときに鼻を突くような刺激臭を感じましたが、その原因は弁当そのものではなく付属の割り箸であったとのことで、健康上の不安を感じての届け出でした。
 届け出のあった割り箸には強いニオイが認められたため、その発生原因の調査を行ったところ、(1)店舗内における割り箸の保管状況不良によるカビの発生や移り香などの可能性は認められませんでした。(2)割り箸の溶出試験の結果、防カビ剤、漂白剤などは検出されませんでした。(3)割り箸は海外にて委託製造された輸入品で、そのニオイは原木の樹液由来と推察されました。(4)製造工程の確認により、割り箸の材料としてはアスペン(ポプラ)が使用されており、原木の蒸煮、乾燥などの加工工程における樹液成分の除去が不十分であったことと、出荷検品時の確認がなされていなかったことが今回の異臭苦情発生の原因と考えられました。
 食品企業のグローバル化や国際分業の進展により、最終製品に影響する原材料や中間製品を含めた品質を確実に担保することは、喫緊(きっきん)かつ重要な課題となっています。
(2020年4月号掲載)

※1 2010年現在
※2 林野庁『平成24年度森林及び林業の動向』p.205(割り箸の供給量)
https://www.rinya.maff.go.jp/j/kikaku/hakusyo/24hakusyo/pdf/21hon6-3.pdf

消費期限切れおにぎりの販売?

 2020年6月からHACCPに沿った衛生管理が施行されますが、食品による健康被害を防止するためには、より多面的な取組みが求められます。
 ある消費者から保健所に、次のような内容の電子メールが送られてきました。「◯月◯日18時頃、食品販売店の陳列棚に消費期限を約1か月経過したおにぎりが売られているのを見かけました。自分は購入しませんでしたが、店舗の在庫管理などに不安を覚えるので情報提供します」。
 店舗調査の結果、当該おにぎりは当日のレジ担当者がその硬さに異常を感じ、表示の消費期限切れにも気づいたため販売されませんでした。
 この店舗の商品バーコードには品名のほかに消費期限の情報も含まれており、納品から販売までの取扱い記録の追跡が可能でした。陳列棚にあった消費期限切れおにぎりは納品記録に存在しないもので、当日夕方の定時商品チェック後の時間帯に何者かによって店舗内に持ち込まれた可能性が考えられました。防犯カメラの映像確認により、おにぎり陳列棚付近で不審な動きをする客が認められましたが、動作の詳細を確認するには至りませんでした。
 消費者のみならず食品事業者自身を守るためには、食中毒などの偶発的な食品事故に対する衛生管理対策に加えて、悪意を持った者による意図的な行為に対する食品防御への取組みも重要になっています。
(2020年5月号掲載)

乳児用粉ミルクに茶色い塊

 梅雨の頃、初産後のある母親が、粉ミルクの缶の中に茶色いダンボール片のような異物が入っていると気づきました。粉ミルクを飲んでいた赤ちゃんへの影響が心配になり、現物を持って保健所を訪れました。
 粉ミルクは缶詰の調製粉乳で、賞味期限内の製品でした。製造元に問い合わせたところ、同ロット製品についての異常発生はありませんでした。異物の拡大観察でカビの菌糸が認められましたが、成分分析により異物の大部分は粉ミルクと同一物質と考えられました。改めて届け出者にミルクの具体的な調製方法を確認したところ、計量スプーンで粉ミルクを哺乳瓶に量り取り、適量のお湯を加えてスプーンで攪拌(かくはん)した後、スプーンはそのまま粉ミルクの缶の中に保管していたことがわかりました。
 以上の結果から、異物発生の原因は、スプーンに付着した水分が缶の中に入ることでミルクが固まり、時間の経過とともに成分の褐変(かっぺん)を起こし、さらにカビが生育したものと考えられました。
 粉ミルク缶に印刷された使用上の注意事項には、湿気によりミルクが固まること、濡れたスプーンの使用やスプーンの缶内保管の禁止などが丁寧に書かれていました。しかしながら、製造者の意図が正確に消費者に伝わるためには、常にその時代の消費者に合わせた情報提供方法の工夫が必要なのかもしれません。
(2020年6月号掲載)

カップ麺に木クズが混入?

 スーパーで購入して自宅に保管していた即席カップ麺を食べていた消費者が、具材の中に木クズのようなものがたくさん入っていることに気がつきました。憤慨した消費者は、異物を混入させたメーカーを厳しく指導してほしいと、食べかけのカップ麺を持って保健所を訪れました。
 苦情品はその表示から賞味期限内の製品であり、容器には異物混入の原因となるような破損箇所は認められませんでした。届けられた苦情品残品のカップ麺の中から異物を取り出して拡大観察したところ、茶色の植物の葉や茎様のものでしたが、カップ麺の具材には異物に類似したものは見当たりませんでした。
 そこで届出者からカップ麺の具体的な取扱いを聴き取ったところ、湯はいつも同じヤカンで沸かしているとのことでしたが、そのヤカンの内部には茶渋の汚れと茶葉のカスが残っていました。ほうじ茶を淹れるためにも兼用しているヤカンだったのです。
 届出者は、ほうじ茶を淹れたあとのヤカン内に茶葉が残っていることに気づかないまま湯を沸かし、その湯をカップ麺に注いだことが今回の木クズ様の異物発見に至った原因と考えられました。
 家庭内においても食器や調理器具の十分な洗浄と目的に合わせた使い分けは、食品事故防止のための基本といえます。
(2020年7月号掲載)

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