Kanbunken 環境文化創造研究所

COLUMN

- コラム

弊所発行の「月刊クリンネス」に掲載された
過去の連載コラムの中から、
テーマ別に選りすぐりの記事をご紹介します。
(執筆者や本文の情報は執筆時のものです)

食品にまつわるトラブルから学ぶ(4)

元東京都杉並保健所 食品衛生監視員 谷口力夫

凍結保管した豚肉を加熱すると緑色に変色?

 ある消費者がスーパーの安売り日にトレイパック入り豚肉を購入し、そのまま自宅の冷凍庫に保管していました。約1か月後、豚肉をパックのまま解凍し、油、塩、コショウで調理してフライパン上でソテーにしました。すると焼き上がった豚肉が緑色に変色し、緑色の汁も出てきたため、驚いた消費者は変色した豚肉を保健所に届け出ました。
 調査の結果、苦情品の豚肉ソテーの緑色部分は薄紙状に剥がし取ることができ、色素が漏れ出ている様子はありませんでした。緑色の異物は、肉汁を吸い取るために生肉とトレイの間に敷かれたドリップ吸水シートの繊維でした。再現実験により、吸水シートと一緒に凍ってしまった肉の解凍が不十分だった場合には、吸水シートの一部分が剥がれて肉のほうに付着してしまうことがわかりました。
 本事例は、消費者による購入食肉の取扱い不注意が直接の原因でしたが、販売店および吸水シートメーカーともに、消費者がトレイパックのまま豚肉を冷凍保管することは想定していませんでした。最近の家庭用冷蔵庫には急速冷凍室を備える機種もあり、まとめ買い食材や作りおき食品の長期間保存を想定した機能も充実してきています。食品関係事業者は消費者による食品のさまざまな取扱いを理解して食品や資材などの選択を行うとともに、消費者への啓発も求められます。
(2020年8月号掲載)

喫茶店で出されたコップの水が白濁

 ある利用者が、喫茶店内で提供されたコップの水が白濁(はくだく)していることに気がつきました。店員の説明では浄水器の不具合かもしれないとのことでしたが、その説明に不安を感じた利用者は、白濁した水を紙コップに入れて保健所に届け出ました。
 提供された水の外観は明らかに白濁していましたが、刺激臭などは感じられませんでした。白濁の原因を探るために分析試験を行ったところ、本来飲料水には含まれない乳由来のタンパク質の存在が確認されました。
 当該店舗内ではコーヒーマシンにパック入り牛乳を使用しており、その機械自体は氷の保管容器の上部に配置されていました。そのために、ミルク入りコーヒーの調製時などに飛散した牛乳が下部の氷保管容器の中に混入していました。店員は牛乳成分が付着した氷に気づかないまま使用し、水を注いでお客様に提供したものと推測されました。
 本事例は店員の不注意、衛生意識不足、不十分な対応などによって発生しました。しかし、最も根本的な要因は上部からの落下物が混入しやすい場所に氷保管容器を配置したことです。働き方の多様化により、飲食業に従事する人たちの経験や知識もさまざまです。たとえ人的作業ミスがあったとしても、お客様や提供する最終商品に影響がないように、作業動線や設備配置についての予防的な工夫を行うことも重要です。
(2020年9月号掲載)

巻き寿司にステープラーの針

 ある日の夕方、勤め帰りの会社員が寿司店で納豆巻きとネギトロ巻きを注文し、容器に詰めてもらって持ち帰りました。自宅で食べていると、ネギトロ巻きのカット面にステープラーの針があることに気づきました。その後、胃の周辺に痛みを感じて心配になり、保健所に届け出ました。
 販売された巻き寿司は一口大にカットされ、透明な蓋付きの合成樹脂製トレーに入れて蓋を輪ゴムで止めたものでした。しかし、混入した異物は使用した形跡のあるステープラーの金属針でした。
 寿司店では、苦情者からネギトロ巻きの注文を受けた際に、事前に容器に入れてあった納豆巻きにネギトロ巻きをカットして詰め合わせていました。納豆巻き入りの容器はステープラーの針で2箇所止められていましたが、ネギトロ巻きを追加する際に針が外されました。この針がまな板の上に落ち、さらに同じまな板の上でネギトロ巻きをカットしたために、今回の異物混入となったことがわかりました。
 調理場は食品を扱う特別な場所です。調理作業に直接関係のないものを持ち込んで使用する行為は、人の健康を害する事態を招きかねません。日常的に使い慣れたものでも、食品に混入すると異物となるものは調理場内に持ち込まないことが衛生管理の第一歩です。見慣れた光景の調理場内でも、時には食品安全の視点から見直してみましょう。
(2020年10月号掲載)

宅配寿司にネズミの糞

 ある家族が宅配専門店の寿司を食べているとき、子どもが口から黒くて硬い物を取り出しました。父親はネズミの糞ではないかと考えて店に連絡しましたが、はっきりとした説明は得られませんでした。その3日後に子どもが下痢をしたため、不安になった父親は保健所に届け出ました。
 黒い異物を拡大観察すると、多数の毛が混在し、毛にはネズミ特有の毛小皮(キューティクル)と毛髄が確認されたため、異物はネズミの糞であると判断されました。店舗調査時の従業員は施設内でネズミは見かけないと話していましたが、実際にはラットサイン※ があちらこちらに認められました。しかも、施設内の食器や調理器具類はむき出しで保管され、全体的に整理・整頓と清掃が不十分なことは明らかでした。
 このような状況から、苦情原因となったネズミの糞は、シャリロボット上にあったものが寿司飯に混入したものと推察されました。
 幸いにも本事例では大事には至りませんでしたが、不衛生な食品が継続して販売されていたことは食中毒発生の重大な危険性をはらんでいました。食品の宅配専門店については、消費者が店舗施設や食品の取扱い状況などを見て店を選ぶということができません。消費者の目には届かないところにおいてこそ、営業者はその責任の重大性を認識して食品の衛生管理をしっかりと実践していただきたいと思います。
(2020年11月号掲載)

※ ネズミが残した痕跡のこと。糞や尿の跡、かじった跡、決まって通る道などにより確認できる

フルーツゼリー菓子に虫の混入

 ある消費者が、贈答品の密封容器入りフルーツゼリーを食べようとしたところ、ゼリーの中から小さな虫が出てきました。製造会社に連絡すると別のゼリー菓子が送られてきましたが、この菓子の中にも虫を見つけてしまいました。同じ会社の菓子に繰り返し虫が混入する状況は衛生上の問題があると考えた消費者が、保健所に届け出ました。
 届け出のあった菓子は未開封の容器入りで、容器外から虫が侵入した形跡は認められず、ゼリーの中には虫(ショウジョウバエ)が羽を広げた状態で固まっていました。虫体のカタラーゼ試験※ の結果は陰性で、製品の加熱工程前に容器内に混入した可能性が考えられました。
 製造所を管轄する保健所の調査結果では、原材料置き場と製造室の間に厳密な隔壁はなく、ゼリーの充填作業は開放状態で行われていました。また、原材料置き場内ではショウジョウバエの発生も確認されました。
 今回の苦情は、容器へのゼリーの充填時に施設内で発生した虫が飛翔して混入し、容器の密封後に加熱殺菌と冷却が行われましたが、検品でも異常を発見できずに出荷されたことにより発生しました。
 贈答用の食品に異常があった場合には、受け取った人のみならず送り主の期待も裏切ることになります。消費者の期待に応える商品提供のためには、小さな異常も見逃さない想像力と地道な取組みが大切です。
(2020年12月号掲載)

※ カタラーゼは、多くの生物が持つ酵素の一種。
異物(生物)に過酸化水素液を滴下してカタラーゼの活性(酸素の泡の発生)が認められなければ、加熱を受けたことが推測できる

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