イカリホールディングス株式会社 よりそい、つよく、ささえる。/環文研(Kanbunken)

COLUMN

- コラム

「月刊クリンネス」に掲載された
過去の連載コラムの中から、
テーマ別に選りすぐりの記事をご紹介します。
(執筆者や本文の情報は執筆時のものです)

食品衛生に取り組むあなたへ(2)

リテールHACCP研究所 山森純子

「報連相」に添える一言

 「報連相(報告・連絡・相談)」は、食品安全に関わるすべての人にとって大切な心構えです。最近ではパソコンやスマートフォンなどを活用したシステムにより、用途に合った報連相が行いやすくなっています。ではこれらのツールを利用するとき、どうすれば大切な報連相の文化を育てていくことができるでしょうか。
 あるとき、「過失によりお客様に不適切な商品をご提供してしまったので、お詫びし、再発防止を行いました」という趣旨の報告をメールで受け取りました。時刻は深夜でした。対面や電話であれば、相手の声を聴くことができるので、ある程度は様子を察することができます。しかし、要件のみが記された電子媒体の文字を見ても、相手の状況を汲み取ることは極めて難しいものです。そのため、このような報告をもらったとき、私は返信を「誠実に報告を有難うございます」という一文から始めることに決めています。報告をしてくれた人から、「この一文に救われたような気持ちになりました」という言葉をもらい、ハッとしたことがあります。お客様に謝罪し、再発防止に全力を尽くすことは職業上当然であると理解はしていても、多忙な毎日のなかで相手の見えないツールを用いて報連相を行うことは、やはり負担がかかります。
 「誠実に報告を有難うございます」の一言を、返信に添えてみませんか。
(2020年11月号掲載)

良くない報告を受けたら

 「良くないことこそ、できる限り早く報告するようにする」ということは、大きな事故や事件を起こさないために大切な心構えです。
 ある食品工場でのエピソードです。この工場では、過去に賞味期限印字のない商品が少数混ざって出荷されてしまい、納入先に大変な迷惑をかけた事故が起きていました。
 その後、印字無し商品の出荷をゼロにするために、原因を分析し、機器の改良や検品強化に懸命に取り組み、再発防止に万全を期していました。しかし、ある日の終業時刻に近づいた夕方、スタッフの1人がリーダーに、「賞味期限印字のない商品が1個混ざっていました」と報告に来ました。
 皆さんなら、最初に何と声をかけるでしょうか。このリーダーは、即座に「よく見つけてくれた!よく知らせてくれた!」と、そのスタッフを称えて労いました。そしてスタッフ全員に声をかけて協力を求め、もう一度すべての商品の目視検品をやり直しました。報告をもらえたことによって、万全な商品のみを出荷することができたのです。
 事故や事件を自分一人だけで防ぐことはできません。良くない報告を受けたときにまず何を伝えるのか、「第一声」への心構えはできていますか。
(2020年12月号掲載)

思いがけないプレゼント

 あるとき、贈答で冷凍食品を受け取られたお客様からお電話がありました。冷凍食品であることを知らずに、しばらくの間、常温で置かれたままになっていたそうです。食べられるか、残念ながら廃棄しなければならないのかを自分で考えたいので、商品について教えてほしいということでした。
 温度管理は食中毒事故予防のために重要なポイントですので、慎重に質問にお答えしました。お話をうかがいながら、原材料について、工程管理について、殺菌工程について、保存試験について、教育についてご説明したのですが、とてもお優しい口調ながら、不思議なことにまるで工場監査を受けているような気持ちになりました。
 ひと通りお答えした後に、お客様は「よく勉強しているね。あなたの対応で商品のファンになった!どこで購入できるのかな?」とおっしゃってくださいました。とても嬉しくて、「お客様は、食品製造にとてもお詳しいですね」と率直な気持ちをお伝えすると、「これからもますます頑張りなさい」と励ましていただき、実は工場監査の大ベテランでいらっしゃったことをそっと教えてくださいました。
 日々の仕事のなかでは、思いがけずこのような素敵なプレゼントをいただけることがあります。
(2021年1月号掲載)

「唯一の取組み」を育てる

 皆さんはどんなときに、「これは、面白い取組みが始まったかもしれない」と感じますか。科学技術に基づいた革新的な事業や、既存のもの同士を独創的な視点で結びつけた事例を見聞きするときでしょうか。
 もちろん私もそれらのものには敬意を払い、また期待もしますが、「一見地味とも思える行動を1回1回心を込めて続けてみよう」という取組みをしている人がいると、今後がとても楽しみになります。
 私の知るある飲食チェーン店の店長が、「バイバイ・プロジェクト」というものを立ち上げました。お子さんを見送るときにはスタッフ全員で気持ちを込めて手を振りましょう、というプロジェクトです。もしこの店長が「1回ごとになんらかの効果や手応えを求めたい」と思ったら、「手を振る」という方法は選ばなかったでしょう。
 毎日お子さんたちに心を込めて手を振り続けていくうちに、お客さまを想うスタッフの気持ちは深まり、心の通った交流が始まりました。そして、「お子さん連れのお客さまに愛される店舗」という特別な存在になることができたのです。
 食品衛生の取組みでも、一朝一夕で劇的な変化を得られることはまずありません。あなたの取組みも、見返りを求めず続けていくことによって、「唯一の取組み」に育てることができるかもしれません。
(2021年2月号掲載)

多様化する価値観

 アインシュタインは、「常識とは、18歳までに積み重なった偏見の累積でしかない」という言葉を残しています。程度の違いはあるにせよ、人は誰でも「こうするのが当たり前だ」とか、「普通ならこう考えるはずだ」と思い込む面があり、それをあたかも「世の中の常識」のように捉えてしまいがちです。心当たりがある方も、いらっしゃるかもしれません。
 とは言うものの、特に日本では長い間、その民族性や国家の成り立ちによって、多くの人がある程度共通の価値観や倫理観を持って暮らす社会構造がありました。
 しかしながら、近年は日本でも急速に価値観や倫理観が多様化しています。食品衛生においても、これまでは「多くの人が共通して感じている価値観」に助けられてきましたが、このような社会の変化に伴い、現在は自分の常識と一緒に働く仲間の常識、取引先やお客様の常識がまったく異なる場合があるかもしれません。
 場面によっては、相手に無理やり自分と共通の認識を持ってもらうことをゴールとせず、相手が持っている価値観や常識は自分の価値観や常識とは別のものとして認識しながら、対話を重ねて協業していくことが必要な時代を迎えています。
(2021年3月号掲載)

いつでもどんなときでも

 ある経営者の方が、新しいビジネスパートナーを選んだときのエピソードです。人を見る目がとても優れた方で、挨拶以外の言葉を一切交わしたことのない人物を「この人なら絶対に間違いない」と抜擢したそうです。それはどのような理由だったのでしょう。
 その方と経営者の方は当時、ある店舗のスタッフとお客様という関係だったそうです。その方はお客様をお見送りするとき、いつでもどんなときでも、美しい姿勢で心を込めて、お客様の姿が完全に見えなくなってもお辞儀をしていたそうです。
 形式的に「姿が見えなくなるまで、お辞儀をしよう」ではなく、お客様のことを想い、感謝の気持ちを込めて見送っていると感じられたのでしょう。「いつもこのように仕事に取り組んでいる方ならば、人間性に間違いはない」と大抜擢したそうです。
 決して派手ではなく目立たない仕事を、誰に言われるでもなく、いつでもどんなときでも驚くほどのクオリティで行っている人は、「未来に続く信頼」も手にします。
 みなさんの仲間にも、このような方がいらっしゃいませんか。今日は、「いつも素晴らしい仕事を本当にありがとう」と、声に出して感謝を伝えてみませんか。
(2021年4月号掲載)

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