Kanbunken 環境文化創造研究所

COLUMN

- コラム

弊所発行の「月刊クリンネス」に掲載された
過去の連載コラムの中から、
テーマ別に選りすぐりの記事をご紹介します。
(執筆者や本文の情報は執筆時のものです)

沖縄のいきもの事情(2)

特定非営利活動法人バイオメディカルサイエンス研究会 常任理事 前川秀彰

沖縄さかな事情

 沖縄の海の魚の話です。カツオ、トンボマグロ、キハダマグロ、メバチマグロは、沖縄近海でもとれます。ハタ、ベラ、ブダイ、カワハギなどカラフルな魚も魚市場に並んでいます。アジ(メアジ)、サバ(グルクマ)、キス(ホシギス)は、本土のものと少し形や模様が違います。味も違うと感じます。
 マグロの類(たぐい)は、本土と同じように刺身で食べても美味しいです。特に高級魚のハマダイ(アカマチー)などの深海のものは、脂がのっている貴重な魚です。
 全般に沖縄の魚は熱帯の海の魚なので、脂がのっていないため干物には適していません。ですから、アオダイ(シチューマチ)やヨスジフエダイ(ビタロー)はバター焼きにすると、より美味しく食べられます。タカサゴ(グルクン)といわれる魚は、から揚げが一般的で骨まで食べます。ハタ(ミーバイといい、いろいろな種類がいる)などの磯魚は、魚によっては刺身もよいですが、魚汁(味噌や塩と煮たもの、特に塩で煮たものをマース煮という)が、おすすめです。
 コチは本土では高級魚ですが、沖縄では魚汁にするときに骨が固くブツ切りに向かないので敬遠されます。骨に沿って削(そ)げば刺身や天ぷらに合う旨い身がとれるのですが、なぜそうしないのかは、わかりません。
(2016年5月号掲載)

川魚事情

 沖縄本島の川は短く、少し上流へ行くとすぐに渓流(けいりゅう)になります。ハゼ科のヨシノボリは何種類かいますが、種の分類は、形態やミトコンドリアDNAの塩基配列を用いてもなかなか難しいです。ヨシノボリの仲間は、一対の腹鰭(はらびれ)が融合して岩などに吸着し、急流に流されないように適応しています。
 生息場所も、陸封(りくふう)型※ (たとえばキバラヨシノボリ)と、海へ下りまた帰ってくる両側(りょうそく)回遊型(クロヨシノボリなど)がいます。ダムの建設で魚が登れないようにしてあれば陸封型が小さな集団を維持できますが、そうでない場合(本土では遡上(そじょう)用に魚道を作るのが普通)は、遡上した魚が集団に入り込み生息数を増やすことで陸封型(環境に対応して、たとえば卵が大きく数が少ない)がいなくなるところがでてきます。せっかく分離されていたのに陸封型が手に入らない状況になってしまいます。
 砂防ダムの場合、ヨシノボリは腹鰭を使ってダム壁を遡上できますので、これも上流の集団と混ざることになります。サンプリングは水位が低いので水中眼鏡を付け、半分潜りながら網を手にして採ります。水面から近づくと逃げますが、潜っている人が近づいてもあまり警戒しません。石や砂を巻き上げると、肉食なので川虫などの餌が得られると思ってかえって寄ってきます。かわいいです。
(2016年6月号掲載)

※ 陸水にとどまって成長・繁殖するようになった魚

沖縄のシロアリ

 シロアリは、ゴキブリの近縁です。沖縄には、家屋に被害をもたらすイエシロアリやヤマトシロアリが生息しているので、昔の木造建築の場合は対策にいろいろな工夫を凝らしてきました。代表的なものとしては、建物の周りに穴を掘って琉球松などの材を埋め、シロアリが付いたところで掘り起こして燃やす方法があります。石灰岩の板を置いたり、砂を敷き詰めたりするのも対策となるようです。しかし、ほかの種類のシロアリは環境中の枯死葉木(こしようぼく)を分解する(セルロースをほぼ100パーセント分解できる)ので、生態系の中で重要な役割を担っています。シロアリにはセルラーゼ遺伝子を持っている種類と、腸内微生物がそれを持っている種類がいます。6月ごろに羽アリが飛翔すると、一面に羽のあるシロアリが群れて次々と羽が落ち、這(は)い回るので大変です。
 タカサゴシロアリの兵アリは、変わった頭部を持っています。頭の中に忌避物質のジテルペンを貯蔵して敵であるアリに吹き付けるために、先が尖った構造になっています。頭のほとんどが、ジテルペンを貯めておくために特殊化しています。この代謝経路は植物によく見られますが、動物では稀です。サンゴもこの経路を持っているといわれています。両種とも植物と異なる遺伝子配列を持っていると考えられ、進化学的にも興味を持たれています。
(2016年7月号掲載)

沖縄のゴキブリ

 沖縄では、胸部背側(きょうぶせがわ)にリング模様のある大きなワモンゴキブリをよく見ます。屋内性で20℃以下では生きられませんので、生息は亜熱帯から熱帯地域ですが、近年、冬でも暖かい環境が保たれている本土にも分布域を広げています。沖縄へ行った当初、蠅叩きで本土のクロゴキブリを叩く要領で加減して叩きましたが、胴が膨れているために潰れてしまいました。ゴキブリとしては飛翔力もあり、なぜか人に向かって飛んでくるので怖がられています。
 40年近くも前ですが、当時住んでいた東京都港区の宿舎の4階の部屋にバタバタという異音とともに飛びこんできたのが、このワモンゴキブリでした。本州にはいないはずのゴキブリがなぜいるのか不思議に思ったものです。今思うと、分布域を広げつつある最初の集団だったのかもしれません。
 サツマゴキブリも日本では南西諸島、九州南部、四国南部が分布域でしたが、和歌山、静岡、千葉、伊豆諸島、小笠原にまで生息範囲を広げています。ソテツの植樹に伴って広がったようです。野外の落ち葉や樹皮の中、倒木や石の下にいます。翅(はね)がほとんどないので、不快度はほかのゴキブリよりは低いです。そのためペットにもなっているようです。また、漢方薬にもシャ虫(ちゅう)※ として使われています。
(2016年8月号掲載)

※ 翅のないゴキブリの乾燥品を使った生薬

沖縄の植物事情 ~カワラケツメイ

 私が勤務していた琉球大学構内で、黄色い花をつけ、オジギソウに似た葉を持つ植物を1本見つけたことがあります。詳しく調べていくうちに、カワラケツメイ(河原決明)であることがわかりました。なぜ大学に1本だけ咲いていたのか理由はわかりません。珍しいものなので注意して見ていたつもりでしたが、ハブなどが隠れないように大学が頻繁に行う草刈によって刈られ、気づいたときには干からびていました。豆の仲間で、お茶は弘法大師が健康茶として全国行脚(あんぎゃ)の際に広めたと言われていることから、「弘法茶」とも呼ばれています。
 ところで、ツマグロキチョウの幼虫は、ほかのキチョウとは異なり、カワラケツメイしか食べません。河原のカワラケツメイが少なくなるとともにこのチョウも少なくなり、絶滅危惧種に指定されています。山口県徳地(とくぢ)では、地域再生の目玉としてカワラケツメイの無農薬、自然栽培に取り組み、広めました。おかげで、カワラケツメイの減少とともに姿を消していたツマグロキチョウが再び飛び交うようになり、徳地はキチョウが舞う里としても知られるようになりました。琉球大学では、キチョウは確認できていませんが、ケツメイ(決明:エビスグサのこと)という植物の種子がケツメイシ(決明子)です。偶然の発見から面白いことがわかった例です。
(2016年9月号掲載)

沖縄の植物事情 ~オカミズオジギソウ

 沖縄はオジギソウが自生している地域で、私が勤務していた琉球大学構内でも、いたるところに生えていました。あるとき、花が紫色のオジギソウと形はそっくりではあるものの、黄色い花をつけた植物を大学構内で見つけました。地面は粘土質で水分が保たれています。ミズオジギソウならば黄色い花を咲かせるのでそうかと思いましたが、粘土質とはいえ水中に根を張るミズオジギソウの状況とは一致しません。調べた結果、インド原産のオカミズオジギソウであると判断しました。これは沖縄でも珍しいようで、琉球大学内でも小さな群落があるのは不思議です。オカミズオジギソウは、草刈りにもへこたれずに花を咲かせています。
 アジアの熱帯から亜熱帯にかけて、日本では奄美大島以南に分布するきれいな白い花が咲くミフクラギ(目脹ら木—オキナワキョウチクトウ)は、沖縄では街路樹になっています。特に問題ないと思い4cmくらいの実を家で植木鉢に埋めておいたら、芽が出て、急速に成長しました。あるとき、これは強い毒※ があるので危険だと聞かされました。公園にも植えてある高木で、子どもでも触れることが容易な環境です。和名のミフクラギは樹液が目に付くと腫れることから来ているので、地元の人にとっては既知(きち)のことのようですが、県外出身の私はまったく知らず、びっくりしました。
(2016年10月号掲載)

※ 毒成分:ケルベリン(Cerberin)をはじめとしたアルカロイドの配糖体

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