Kanbunken 環境文化創造研究所

COLUMN

- コラム

弊所発行の「月刊クリンネス」に掲載された
過去の連載コラムの中から、
テーマ別に選りすぐりの記事をご紹介します。
(執筆者や本文の情報は執筆時のものです)

ぶらぶら歩きの極意(2)

ノンフィクションライター 眞鍋じゅんこ

GWは、お城散歩

 日本中で大渋滞や大混雑のゴールデンウィークですが、案外穴場なのが東京です。なにしろ会社は軒並み連休で住人たちもお出掛け中なのですから。そこで今回は都心部の皇居周辺めぐりです。ジョギングランナーが毎日周回も可能な道のりですし、地下鉄は皇居を中心に何路線もあるので、どこからでも乗り降りできるので気楽です。
 まずは、国の重要文化財に指定された桜田門。ここで暗殺された井伊直弼(いいなおすけ)の上屋敷は少し南側、現在の国会議事堂あたりでした。門内の皇居外苑を進むと、左手に二重橋、右手には遥かに東京駅が見えてきます。
 諸国大名が江戸城に参上した大手門を、私たちも堂々とくぐりましょう。内側の皇居東御苑が、一般開放されているのです。ここはまさに江戸城。大奥跡地の大きさに驚き、3代将軍家光が造らせた天守台の石垣の威風堂々たる姿に感嘆します。建物の天守閣自体は明暦の大火(1657年)で焼失後に再建を断念しましたが、天守台上からでも公園を取り囲むビル群を見晴らせます。この先は北桔梗門(きたききょうもん)から北には科学技術館や日本武道館のある北の丸公園、左へ行けば桜の名所千鳥ヶ淵(ちどりがふち)方面です。途中、お堀端に点在するホテルで優雅にティータイムも一考ですね。
 私は地方へ行っても城や城下町めぐりが大好きです。古地図や観光案内図を片手に、歴史に想いを馳(は)せてじっくり城散歩もおもしろいですよ。
(2014年5月号掲載)

雨の日は地下探検

 梅雨にうってつけの散歩コースはターミナル駅の地下道です。くまなく歩いてみると、新しい店や知らない出口をたくさん発見できますよ。
 地下探検の極めつけは、東京駅の日本一長い地下通路です。実際、私もここ数か月、仕事で近辺のビルを訪れたのですが、毎回何度も間違えました。大手町駅を降りたはずが迷ったあげくに地上に出ると、目の前にレンガ造りの東京駅がそびえていたりするのです。
 調べてみれば東京駅界隈(かいわい)はまさに地下帝国でした。何しろキャッチフレーズが「徒歩圏内で13駅20路線が利用可能です」。どうやら相次ぐ再開発の新ビル建設に伴って、地下街がどんどんつながったようです。
 今では大手町から東銀座の歌舞伎座まで約4km、1時間近く雨に濡れずに歩けます。その間には地下街が鈴なり、たとえば日本最大級の八重洲地下街だけでも、売り場面積約16,000m²、180余店の広さです。
 地下街には買い物はもちろん、郵便局や歯科医院まで揃っています。飲食店も都心の1等地にしては気軽に入れる店も多く、私も仕事仲間と打合せ帰りにさまよいながらの居酒屋開発が楽しみになりました。もっとも、酔った勢いでボトルキープした店に再び辿り着けるかは疑問ですが。
 地下街のない町では、駅ビルやアーケード商店街散歩はいかがでしょう。じっくり歩くと意外な発見や美味しい店発掘を楽しめそうですよ。
(2014年6月号掲載)

水辺を歩く・その1

 暑い夏が迫る季節は、水辺散歩がおすすめです。水面を経た風は涼しげで体感温度も低いといいますし、河川敷は真っ青な大空が広がる都会では貴重な空間でもあります。そこで3回連続して水辺をご案内します。
 まずは、川。東京都と千葉県境を流れる旧江戸川流域の葛飾柴又は、映画『男はつらいよ』の舞台です。柴又帝釈天参拝後に裏手の土手を訪れるたびに、寅さんの悠然と歩く姿をつい目で探してしまうほど、懐かしくも美しい風景で、澄んだ日には富士山と筑波山が東西に見えます。
 河川敷から矢切の渡しに乗れます。小舟の船頭さんは対岸までほとんど手漕ぎで、ぎぃっぎぃっという櫓(ろ)の音と鳥の声、水面をすべる数分間は旅情たっぷりです。対岸には売店とベンチがあるのでひと休み。もともとここは農村地帯で、対岸の耕作地へ通う農民のための渡し舟でした。
 土手の向こうには今も農地があります。帰りがけに帝釈天参道の茶店で草だんごをいただきます。これもかつて周辺で水田の米と土手のヨモギがふんだんに採れたから名物なのだと聞くと、一層味わい深いものです。
 そう、川辺には人の生活の歴史が深く刻まれているのです。昔は川船が大量輸送や人の交通に欠かせなかったので、街道と川が交わる場所に町が形成され、荷揚げ場や問屋街も発展しました。歴史や自然、生きものなど興味ある分野のガイドブック片手に、川岸を歩いてみませんか。
(2014年7月号掲載)

水辺を歩く・その2

 いよいよ本格的な夏。そこで今月の水辺は、海岸線を歩きます。
 首都東京と千葉県、神奈川県は「東京湾」という巨大な入り江を抱いています。けれど普段「海辺の町」であることは意識していませんね。なにしろこの100年間で9割が埋め立てられた東京湾の海岸線は、無骨(ぶこつ)な岸壁や立ち入り禁止の埠頭、工業地帯に阻まれて日常から切り離されていました。
 ここ数十年は行政にも「親水(しんすい)」意識が高まり、通勤電車範囲に臨海公園や人工海浜が造られました。千葉県には千葉市の稲毛海浜公園、神奈川県横浜市には海の公園、東京には葛西海浜公園の西なぎさなどがあります。なかでも有名なのが、東京都港区のお台場海浜公園。実は、都心とお台場を結ぶレインボーブリッジは歩いて渡れます。橋桁(はしげた)からエレベーターに乗ると、ジョギング姿も、ちらほら。「お台場回りコースは人気のようです」と地元の方。遊泳はできませんが、潮風の浜辺で対岸のビル群を眺めると不思議に大らかなリゾート気分になります。
 ところで「お台場」とは、江戸末期に黒船来航で慌てた幕府が防衛用に急ごしらえした砲台です。現在は2か所保存され、第三台場は海浜公園側から歩いて入れますが、ほかは壊されたり埋め立て地の一部になりました。古い地図や資料を片手に、近場の新旧海岸線や歴史をたどるのも面白い散歩です。そして海を眺めて、ビールをぐいっと!
(2014年8月号掲載)

水辺を歩く・その3

 地方都市を訪れると、かつて舟運(しゅううん)※1 や生活用水として大切にされた川が、今なお美しい景観を作る姿にうらやましさを覚えます。
 それに引きかえ往年の水の都東京では、終戦後にはガレキ処理で埋立て、高度成長期には下水道として暗渠(あんきょ)※2 にしてしまいました。それでも都心のあちこちに川は残っています。川面をなでる風は涼しげです。
 ところで都心の河川には、驚くべきカラクリがあります。たとえば目黒川は、なんと自然の水源は極わずか。地表がアスファルトで覆われて雨水は下水道直行なので、地下水がほとんど川に流れ込まないのです。JR山手線の五反田駅付近では川の水は満々ですが、実はこれは東京湾の海水がさかのぼったもの。ではその上流はというと、新宿区の落合水再生センターの高度処理水が、何kmもの配水管伝いに供給されています。きれいな水を流して河川の汚濁を防止しているのです。
 さらに上流部では暗渠化され、上に人工小川が流れているのがご愛嬌です。
 満身創痍(まんしんそうい)の都市河川ですが、それでも川面の広々とした空間や岸辺の桜並木は都心には貴重です。往年の川筋も路地になっていたり、緑道として整備されたり、かつて川に架かった橋の名が交差点名に残された場所も多くあります。料理道具街で有名な浅草のかっぱ橋もそのひとつ。新旧の地図を見比べながら、川探しに興じてみませんか。
(2014年9月号掲載)

※ 1 船による交通や輸送
※ 2 地下に埋設したり、ふたで覆ったりした水路

食べもの散歩・その1「フルーツ狩り」

 食欲の季節です。そこで今回から「おいしい食べもの」探し歩きです。
 秋といえば果物(くだもの)。夏に疲れた体には、豊富なミネラルがご馳走です。見回せば東京近郊にも産地はけっこうあります。たとえば梨は千葉県松戸市が「二十世紀」、神奈川県川崎市は「長十郎」発祥の地で、農家の庭先で売られています。これからの季節は梨にブドウ、やがてリンゴにミカン。暮れからはイチゴ狩りも始まりますね。
 フルーツ狩り園もおすすめ。もぎたては、美味しさもひとしおです。「木の枝で完熟したのはおいしいでしょ。でも市場へは傷まないようにもっと固いうちに出荷するから、これは味わえないのよ」と農家の方。もうジューシーなことなんのって、以前ぶどう狩り園で運転に疲れた夫が木陰で昼寝する間に、なんと28房も食べてしまったことがあります。
 川越や千葉のさつまいも掘りも楽しいもの。茎を引っ張ると文字通りの芋づる式に大きなサツマイモが現れて、思わず歓声!そのあと農家さんの庭先でお茶と自家製漬物をご馳走になって、のんびりしました。
 近頃は、農家や農協の産地直売所も充実していますね。秩父地方の直売所で完熟しても緑色の小さないちじくを見つけたり、深谷市では焼くと驚くほど甘いけれど柔らか過ぎて出荷しにくい長ネギを買ったりと、現地ならではの珍しい食べものも、まめに探し歩くと面白いものです。
(2014年10月号掲載)

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