イカリホールディングス株式会社 よりそい、つよく、ささえる。/環文研(Kanbunken)

COLUMN

- コラム

「月刊クリンネス」に掲載された
過去の連載コラムの中から、
テーマ別に選りすぐりの記事をご紹介します。
(執筆者や本文の情報は執筆時のものです)

お食い初めからお食い締めまで、食を楽しむ人生を

一般社団法人 mogmog engine 加藤さくら&永峰玲子
▼スナック都ろ美のホームページ▼
https://snack-toromi.com/

スナック都(と)ろ美(み)へようこそ

 ようこそ、スナック都ろ美へ!
 スナック都ろ美は、摂食嚥下(えんげ)障害がある子どもとその家族のコミュニティです。オンライン上でオープンをしているスナックで、入店対象は摂食嚥下障害がある子ども自身とその親御さんです。「もぐもぐは、それぞれ。」口、鼻、胃、さまざまな食形態の子どもとその家族が一生涯食を楽しめる世の中にすることを主な目的としています。
 日々の工夫や役立つ情報の共有、相談や愚痴を吐き出せる場として、気軽に話せる雰囲気を重視し、場末のスナックの世界観を演出しています。
 スナック都ろ美に登録(無料)すると「常連さん」になります。2023年11月現在、約550名の常連さんがいます。
 月数回zoomでオープンするバーチャルスナックへの参加のほか、LINEオープンチャットで24時間365日、困りごとの相談や情報収集できる場があります。たとえば、「おすすめのミキサーは?」と投稿すると瞬時に数々の情報が集まります。気になる商品のサンプルプレゼント企画や、関心が高いことを部活動にする取組みもあります。
 周りに食事支援が必要なお子さまをもつ方がいらしたら、ぜひご紹介いただけるとうれしいです。「スナック都ろ美」で検索してみてください。
(2024年1月号掲載)

もぐもぐする力が弱い子どもたち

 上手に噛んだり、飲み込んだりすることが難しい「摂食嚥下(えんげ)障害」と聞くと、多くの方は高齢者をイメージすると思います。しかし、同じ障害を抱える子どもが多く存在していることはあまり知られていません。子どもの場合、さまざまな病気が関係していることが多く、国もその実態を把握しきれていないのが現状です。
 生まれつき、もしくは乳幼児期から身体的な障害を抱える子どもは、食べる機能の獲得に向けて取り組んでいます。一方で、進行性の病により一度獲得した機能が衰えるという高齢者に似た経過を辿るパターンもあり、悩みも人それぞれです。また、胃ろう、経鼻チューブなどから栄養剤や手作り料理をペースト状にして食事をする方も多く、メニュー以外にも専門的な相談があります。
 「子どもの摂食嚥下障害に関する情報がない」。食事は毎日のことなのに、気軽に相談する場所もなく、ネットを探しても求めているアドバイスは見当たりません。日頃のモヤモヤを解消するのに、当事者によるリアルな情報が役立ちます。摂食嚥下障害がある子どもとその家族のコミュニティ「スナック都ろ美」には、困ったときに先輩ママがすぐに的確な情報をくれて嬉しいという感想が寄せられています。同じ悩みをもつ当事者同士が、安心して楽しく交流できる空間を大切にしています。
(2024年3月号掲載)

子どもと一緒においしいを共有したい

 摂食嚥下(えんげ)障害がある子どもの食事は個別性が高く、さまざまな食形態があります。噛む力が弱い子は、口に入れる前に食材を咀嚼された状態にする必要があり、そのような形態を「まとまりマッシュ」、「ペースト」と呼んでいますが、これらの形態には見た目の課題があります。元のメニューが何なのかがわからないため、「おいしそう」という感情が湧きにくいのです。食事をする際、食べる前に「おいしそう!」とワクワクして、口に入れて「おいしい!」と体験をすること、また、親子で「おいしいね」と心を通わす時間はかけがえのない宝ものです。
 そんな親心から生まれたさまざまな工夫を、スナック都ろ美では部活動として楽しんでいます。
 (1)ペーストでつくるキャラ弁部:野菜パウダーや海苔の佃煮など、色味で遊べる食材を駆使することで、見た目に楽しく、かつ食べて「おいしい!」と親子で食事を楽しむことが可能になりました。
 (2)デリソフター部:見た目そのままで柔らかく調理ができるケア家電を、普段の食事に取り入れる方が増えています。
 (3)コンビニスイーツ部:摂食嚥下障害の子どもも食べられるような食形態のコンビニスイーツを既存商品から探し出し、スナック都ろ美内でシェアしています。
 子どもと一緒に「おいしい」を共有して、豊かな時間を増やしていきたいです。
(2024年5月号掲載)

子ども向けの咀嚼配慮食品がない!

 噛む力、飲み込む力が弱い摂食嚥下(えんげ)障害のある人は、日本国内に100万人以上いるといわれています。また、年齢を重ねることで筋力が衰え、誤嚥性肺炎などのリスクが高まることはよく知られています。そのため、さまざまな企業から咀嚼(そしゃく)に配慮された介護食が販売され、レトルト食や宅配弁当など種類も豊富になってきました。この恩恵を受けて、摂食嚥下障害のある子どもたちが気軽に介護食を選べるようになったことは嬉しい反面、フィットする商品が少ないという現状があります。
 高齢者と小児では、必要とされる栄養素や食事量が異なります。また、赤ちゃん用の離乳食は味が薄く、量も少ないのです。重度の肢体不自由であっても、育ち盛りの子どもたちはハンバーグやステーキ、唐揚げなどのメニューが大好きで、胃袋は元気いっぱい!また、若いファミリー層は外食をする機会も多いのですが、ペースト食の子がオーダーをしてそのまま食べられるメニューがほとんどなく、持参したレトルト食で対応することは日常茶飯事です。
 離乳食完了後から高齢者になるまでの中間客層に向けた咀嚼配慮食品の充実や、お店のメニューを一緒に食べられるように、食形態を調整する器材の持ち込みができたり、貸してくれたりすると、さらにお出かけしやすい環境になると思います。
(2024年7月号掲載)

みんなでもぐもぐできる食べものの誕生

 「このコンビニスイーツは、普段ペースト食の娘と一緒に食べられたよ!」
 摂食嚥下(えんげ)障害がある子どもとその家族のコミュニティ『スナック都(と)ろ美(み)』では、このように一緒に食べられるものを発見するたびに共有してくれるご家族がたくさんいます。ペースト食にするためミキサーにかけると、見た目がなんのメニューなのかがわからなくなってしまうため、既製品で見た目も良く味もおいしくて一緒に食べられるものがあると、仲間たちに教えたくなるのです。また、日頃子どものケアで忙しい親御さんたちは、毎日の食事をできるだけおいしく食べたい、けれど楽をしたいと思っているのが本音です。
 2022年、東京都と東京医科歯科大学、東京大学の共同事業「インクルーシブフードの開発と普及」において、見た目も良く味もおいしい、経管栄養の子どもも一緒に同じものを食べられる「インクルーシブフード」を開発しました。「インクルーシブフード」という言葉を創ることで、摂食嚥下障害がある子どもを起点にデザインしつつ、みんなで食べられる食べものの概念が世に普及することを目的としています。本事業で開発された世界初のやわらかお子さまランチ「もぐもぐBOX」は、スナック都ろ美のWEBサイトから購入可能です。
(2024年9月号掲載)

食を通してインクルーシブな世の中に

 摂食嚥下(えんげ)障害がある子どもとその家族のコミュニティ「スナック都(と)ろ美(み)」では、「嚥下調整食のレシピが知りたい」、「子どもと一緒の食事を楽しみたい」など食に関するお困りごとを解決する取組みを行っています。特に9割以上の方が困難と感じている外食について、誰もが気軽に利用できる環境が整えば、外出する機会も増え、さまざまな人が心地良く過ごせるインクルーシブな社会が創れると信じています。
 私たちは子どもの摂食嚥下障害にフォーカスしていますが、年齢を重ねると誰もが噛む力や飲み込む力が弱くなり、誤嚥性肺炎のリスクが高まります。「人生100年時代」といわれるようになりましたが、100万人を超える高齢者も同じように外食に困難を抱えています。最近では農林水産省が「外食・中食産業持続的発展対策事業」としてインクルーシブな環境作り、施設改修、技術、機器の導入などに補助金を付けて後押しする動きも出てきました。国も課題と捉えている今、食を取り巻く環境が変わることを期待しています。
 お食い初めからお食い締めまで大切な人と食を楽しめるように、ぜひ一緒に食を通してインクルーシブな世の中を創っていきませんか。私たちのビジョンに賛同していただけるサポーターを絶賛募集中です!「スナック都ろ美」までご連絡ください。
(2024年11月号掲載)

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