イカリホールディングス株式会社 よりそい、つよく、ささえる。/環文研(Kanbunken)

COLUMN

- コラム

「月刊クリンネス」に掲載された
過去の連載コラムの中から、
テーマ別に選りすぐりの記事をご紹介します。
(執筆者や本文の情報は執筆時のものです)

誌上でめぐる世界の恐竜化石(3)

独立行政法人 国立科学博物館 副館長 真鍋真

アメリカ・アリゾナ州

 今から約2億年前のジュラ紀前期、現在の北アメリカにスクテロサウルスという草食恐竜がいました。全長1.5mほどの二足歩行の草食恐竜です。
 スクテロとはラテン語で「小さな盾」を意味します。首から胴体、尾にかけて、長さ1cmくらいの小さな硬いウロコ(盾)を300個ほどもっていたことから名付けられました。
 ジュラ紀のステゴサウルスのような剣竜(けんりゅう)、白亜紀のアンキロサウルスのような鎧竜(よろいりゅう)など、体の周りのウロコを骨で分厚く頑丈にしていった草食恐竜がいたことが知られていますが、スクテロサウルスはそれらの祖先形の恐竜だったと考えられています。丈夫なウロコは、ワニ革のベルトやお財布のようなものでした。ステゴサウルスやアンキロサウルスは四足歩行でしたが、その遠い祖先のスクテロサウルスは二足歩行の小さな恐竜でした。
 7月7日から9月24日まで、大阪市立自然史博物館で開催される「恐竜博2023」では、最も完全度の高い最良の鎧竜といわれる全長約6mのズールの全身実物化石と、スクテロサウルスの全身複製骨格が展示されています。機会がありましたら、会場でスクテロサウルスからズールへの進化に想いを馳せてみてください。
(2023年8月号掲載)

アメリカ・モンタナ州

 国立科学博物館の角竜化石が新種であることがわかり、8月にフルカトケラトプス・エルキダンスと名づけられました。フルカトは「フォークのような」、ケラトは「角をもつ」、オプスは「顔」という意味です。頭を上から見たとき、二又のフォークのように2本の角が前方に真っすぐ伸びているのが特徴です。9月まで開催されていた「恐竜博2023」で展示していたので、ご覧になった読者もいるかもしれません。
 頭部から尾の中ほどまでの骨化石が発見されていて、吻部(ふんぶ)から尾の先端までが約3.5mです。骨の断面には木の年輪のような縞模様が2本あることから、3歳未満の若い恐竜だと考えられています。若いので、まだ骨と骨のつながりが弱く、多くの骨がばらばらになって発見されました。後頭部のフリルとよばれる骨の縁はギザギザな形をしていますが、この化石ではギザギザの部分がばらばらだったため、ギザギザとフリルのつながり部分の形まで見ることができました。そんなところから、学名の下の名前(種小名)エルキダンスには、これまで見過ごされてきたような骨にも「光をあてる」という意味が含まれています。今から約7600万年前の白亜紀後期、現在のアメリカ・モンタナ州に、鎧竜のズール、肉食恐竜のゴルゴサウルスなどと一緒に生息していた恐竜です。
(2023年12月号掲載)

アメリカ・サウスダコタ州

 恐竜化石は地層の中に埋まった状態で発見されるため、その恐竜が生前、どこでどのように暮らしていたのかは、骨や歯などの硬組織から推定しなくてはなりません。アメリカ・サウスダコタ州で発見されたテスケロサウルスは、鳥盤類に分類される2足歩行の草食恐竜です。白亜紀最末期の約6800~6600万年前、ティラノサウルスやトリケラトプスなどと同じ時空間に生息していました。ノースカロライナ自然科学博物館に展示されているテスケロサウルス化石についての新しい研究が、昨年の11月6日に発表されました。
 頭部をCTスキャンし、化石の中に空洞として残っていた脳と三半規管の形と大きさを復元してみると、嗅覚がとても発達している一方、聴力はあまり発達していなかったらしいということが明らかになりました。この組み合わせは、地下に穴を掘って暮らす哺乳類などに見られる傾向だそうです。テスケロサウルスも、地中に潜ることでティラノサウルスなどの肉食恐竜たちと棲み分けていた可能性が出てきました。テスケロサウルスの全長は4m近くと大きいので、体が小さい子どもの頃だけ地下の巣で暮らしていたのかもしれません。または彼らの祖先が地中で暮らしていただけで、テスケロサウルスはその祖先の暮らしを脳などの軟組織に残しているだけという可能性もあります。
(2024年2月号掲載)

アメリカ・ニューメキシコ州

 今から約40年前、アメリカ・ニューメキシコ州から発見された化石は肉食恐竜ティラノサウルス・レックスに分類されていました。その化石が、ティラノサウルス属の新種マクレイエンシスと名付けられたという論文が2024年1月に発表されました。2024年最初の新種恐竜のひとつです。頭部しか発見されていませんが、全長約12mと推定されています。
 最近になって、この化石が発見された地層の年代が今から約7300万年前だったことが明らかになりました。ティラノサウルス・レックスが生息していたのは約6800万年前から6600万年前だと考えられています。レックスにしては古すぎること、そしてレックスよりも下顎がほっそりとしていることなどの特徴から新種になりました。
 今から1億2000万年前ごろは全長2mほどの羽毛恐竜だったティラノサウルス類が、約7000万年前にアジアで大型化してタルボサウルスに、そして北アメリカに渡ったものがティラノサウルス・レックスになったというのが一般的な説でした。今回、ニューメキシコ州の約7300万年前の地層からマクレイエンシスが発見されたことから、ティラノサウルス類の大型化は北アメリカで始まり、その子孫の一部がアジアに渡ってタルボサウルスになったという可能性が出てきました。
(2024年4月号掲載)

  • 全て
  • 感染症
  • 健康
  • いきもの
  • 食品
  • 暮らし