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COLUMN

- コラム

「月刊クリンネス」に掲載された
過去の連載コラムの中から、
テーマ別に選りすぐりの記事をご紹介します。
(執筆者や本文の情報は執筆時のものです)

認知症の予防(5)

介護福祉士 中村和彦

40代から蓄積される認知症の原因物質

 認知症専門医院ひろかわクリニックの広川慶裕院長は、「認知症の原因物質は40代から脳に溜まり始める」と言います。その理由はふたつあります。ひとつは、「認知症が生活習慣病の延長線上にある病気」だからです。生活習慣病である糖尿病や高血圧、メタボリックシンドロームなどは、いずれも血管の機能を下げる病気であり、その結果として脳にも影響を及ぼします。40代はまさに生活習慣病が急激に増える年代であり、健康診断などで指摘される人も多く見られます。
 ふたつ目の理由として、アルツハイマー型の認知症を引き起こす「アミロイドβ」という物質が蓄積を始めるのが40歳頃からで、その後20年ほどかけてピークに達すると、広川院長は指摘します。
 最新の脳科学によると、脳は睡眠中に少し収縮し、それによって生じたわずかなすき間を使ってアミロイドβをはじめとする余計な物質を脳脊髄液が洗い流しているとのこと。つまり、十分な睡眠をとらないと、老廃物は排出されません。最低でも毎日5時間以上の睡眠は必須で、それ以下だとアミロイドβを排出し切るのは難しいとされています。
 また、睡眠時間には、体を修復する成長ホルモンが最も分泌されやすい23時~3時を含めるのが理想とされます。生活リズムを一定に保ち、さまざまな生活習慣を見直す年代こそが40代だといえます。
(2023年5月号掲載)

参考文献:『THE21』2023年1月号特集「40代・50代から衰える脳 伸びる脳」

やる気がなく礼儀・マナーの欠如も表れる前頭側頭型認知症

 誰しも高齢になると脳が縮んでいきます。認知症の方や物忘れが多い方の脳は、記憶を司る海馬が萎縮すると考えられますが、これには個人差があります。そして、より早くから縮む部位が、脳の前方に位置する前頭葉です。前頭葉は、老化や脳梗塞、事故などで損傷すると、意欲が失われたり感情や思考の切り替えが難しくなります。また、物事の段取りがつけられなくなったり、創造性の欠如なども見られます。
 前頭葉と側頭葉の萎縮が原因と考えられる前頭側頭型認知症は、アルツハイマー型認知症などに比べて割合は少ないものの、他の認知症では見られにくい人格変化や行動障害、運動障害などの症状が表れ、「暴力的になる」、「失礼な発言をする」、「遠慮をしなくなる」のが特徴です。また、毎日同じところへ出かける、同じ料理を食べるというように「行動を繰り返す」こともあります。社会的に不適切な行動、礼儀・マナーの欠如、衝動的な行動がないか、無関心・無気力になっていないかなど、日頃からよく観察しておきましょう。もし、このような症状がみられた場合は、まずは精神科や神経内科の受診をお勧めします。
 脳トレで有名な東北大学加齢医学研究所の川島隆太教授は、前頭葉の血流を増やすために単純な計算や読み・書きを毎日反復練習する「学習療法」を提唱していますので、調べてみてはいかがでしょうか。
(2023年12月号掲載)

認知症の名医が認知症患者として記した言葉

 認知症研究の第一人者である故・長谷川和夫※1 さんは、自らも認知症であることを公表、『認知症でも心は豊かに生きている※2 』を出版されました。認知症に対して不安を抱く多くの人たちに、安心と前向きに生きる力を与える長谷川さんの言葉をその著書から紹介しましょう。
 「認知症になっても、何もわからない別人になるのではない」
 認知症になったからといって、別な人になってしまうわけではありません。人間はいろいろな面を持っていますが、その生は連続しています。昨日まで生きてきた続きの今日の自分が、そこにいるのです。
 「認知症は不便なことだが、不幸なことではない」
 認知症になると、繰り返し同じことを話したり道に迷ったり、確かに不便なことは起こりますが、まわりのサポートでなんとかなります。喜怒哀楽の感情はそのままに、その人らしく生きられるのです。
 「記憶が抜けてもまわりの人が覚えてくれている」
 自分がした行動や過去にあった出来事を忘れてしまっても、周囲の人がそれを覚えてくれていて、助けてくれますので、不安に思うことはありません。
 認知症でも心豊かに生きられる、そう思える人と社会でありたいものです。
(2024年1月号掲載)

※1 認知症介護研究・研修東京センター名誉センター長。聖マリアンナ医科大学名誉教授。
1974年に「長谷川式簡易知能評価スケール」を公表。
「痴呆症」から「認知症」へ呼称変更をした立役者でもある。2021年11月13日逝去
※2 2020年8月6日中央法規出版より上梓

運動している人は認知症などのリスクが低い

 2023年11月、厚生労働省の専門家検討会は、10年ぶりに身体活動・運動の目安となるガイド案をまとめました。その中で、身体活動や運動量が多い人は少ない人と比べ、循環器病やがん、うつ病、認知症などの発症リスクが低いことが報告されています。
 ガイド案は、科学的知見をもとに子ども(18歳未満)、成人(18歳以上)、高齢者に分け、具体的な推奨内容が示されています。
 歩行について、成人は「1日60分(1日約8000歩)以上」、高齢者は「1日40分(1日約6000歩)以上」を推奨しており、歩行以外には卓球やテニス、水泳などのスポーツのほか、階段の昇降や風呂掃除といった日常生活の動きも例示。一定の負荷のかかる筋力トレーニングは、成人、高齢者ともに「週2~3回」を推奨。筋トレにより、死亡や心血管疾患、がん、糖尿病などのリスクが10~17%低くなるとの報告もあります。高齢者は、ダンスやラジオ体操、ヨガなども含め安全に配慮し、転倒などに注意して運動することを勧めています。
 厚生労働省は特に世界保健機関(WHO)のガイドライン※ に注目。子どもは少し息があがる程度の活動を「1日60分以上」や、有酸素運動など強めの活動を「週3日以上」とする、などを参考にしているといいます。
(2024年3月号掲載)

※  身体活動および座位行動に関するガイドライン(2020年)

生涯にわたる楽器演奏が脳の健康を保つ

 英エクセター大学医学部のアン・コルベット博士らの研究チームは、『International Journal of Geriatric Psychiatry』誌において、楽器の演奏や歌唱は、高齢者の脳に良い影響をもたらすという研究成果を発表しました。
 脳の老化や認知症発症の要因を解明するための研究の一環として、40歳以上を対象に、演奏、歌唱、読譜、音楽鑑賞、音楽的能力についてインターネットを使った質問調査を行い、1年に3回以上の認知機能テストの追跡調査が可能な1570人から回答を得て、解析を行いました。対象者の89%が楽器演奏の経験者で、うち44%が調査時も楽器演奏を続けていました。楽器演奏、特にピアノやキーボードなどの鍵盤楽器の演奏と作業記憶の良好なパフォーマンスとの関連性が高く、高齢になっても演奏を続けている人のほうが効果の大きいことがわかりました。また歌を歌うことも効果的で、合唱団やグループなどに参加することで実行機能が向上したとみられると述べています。ただし、単に音楽を聴くだけでは、認知機能予備力の増強は確認されませんでした。
 コルベット博士は、「私たちは音楽に関わりを持ち続けることが、認知予備能として知られる脳の敏捷性(びんしょうせい)と回復力を養う方法だと考えている」と述べています。
(2024年7月号掲載)

参考:
https://amass.jp/172718/https://newsphere.jp/national/20240207-2/2/

筋肉と認知症の関係が明らかに

 筋肉と認知症の関係について、富山大学和漢医薬学総合研究所の研究が注目を集めています※1 。研究ではマウスの後ろ足を2週間ほど不動化し骨格筋を萎縮させたところ、認知症が発症したとのこと。その原因として萎縮した骨格筋から分泌されるヘモペキシンが脳に作用することを解明。動かさないことで衰えた筋肉から分泌される有害分子を発見したのです。
 一方、運動することで、筋肉組織からイリシンという物質が分泌され、それが血流に乗って脳に運ばれると、脳内で脳由来神経細胞因子(BDNF)というたんぱく質を分泌。細胞の新生や再生を促し、脳の活動性を高め、認知症の予防につながるといわれています。運動と脳の認知機能については、中央大学と筑波大学の共同研究でも報告されています※2 。わずか10分間の軽運動でも、脳の中の注意・集中、判断、計画・行動能力などの認知機能を司る部位の活動が高まることを世界で初めて科学的に確認しています。
 こうした研究から、元気なうちに筋トレや散歩などの有酸素運動を習慣化し、日常的に行うことで認知症のリスクを軽減することをお勧めします。また、介護保険をご利用中の方は、機能訓練型のデイサービスで筋トレに励んでみてはいかがでしょうか。
(2024年9月号掲載)

※ 1  T. Nagase, et al.(2021) Skeletal muscle atrophy-induced hemopexin accelerates onset
of cognitive impairment in Alzheimer's disease, JCSM
※ 2  K. Byun, et al.(2014) Positive effect of acute mild exercise on executive function via
arousal-related prefrontal activations: an fNIRS study,Neuro Image(98)

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