イカリホールディングス株式会社 よりそい、つよく、ささえる。/環文研(Kanbunken)

COLUMN

- コラム

「月刊クリンネス」に掲載された
過去の連載コラムの中から、
テーマ別に選りすぐりの記事をご紹介します。
(執筆者や本文の情報は執筆時のものです)

素晴らしき生きものたち(3)

富山市ファミリーパーク 名誉園長/元日本動物園水族館協会 会長 山本茂行

生活リズムも犬に合わせて

 人と犬の関係は主従関係とされてきました。近年はそうではなく信頼関係といわれます。50年間犬と暮らしている私もそう思います。
 現役を退き、自由気ままな晴耕雨読の仙人生活を享受している私に、愛犬まりもは24時間密着してきます。庭や屋内で元気に遊びもしますが、朝夕のごはんと散歩、排泄以外、1日の大半は眠りです。昼は私のそばで居眠り。夜はベッドで一緒に寝ます。
 ところで、人は朝から夕方まで活動して、夜は寝るのが一般的な生活リズムですが、犬は違います。人の1日が犬の3日分ほどに相当するそうです。主従関係なら人に従わせるけれど、信頼関係ならば多少なりとも犬の生活リズムに寄り添いたいと、私は以前から考えていました。現役時代はできぬことでしたが、仙人生活の今なら可能です。
 1日を2部制にしました。朝起きて午後5時ごろまでが第1部です。その間に、朝食、散歩、外作業、晩酌(夕食)をして寝ます。まりももベッドで熟睡タイム。2部は午後7~8時から始まります。散歩に出ることもありますが、たいがい読書、書きもの、絵描きにテレビ。嬉しいことに2部にも2度目の晩酌が楽しめます。まりもを家に置いて外出することもあり、昼間の彼女はうつらうつらのレム睡眠が多いようです。
 1日2部制。彼女もきっと気に入ってくれていることでしょう。
(2024年7月号掲載)

安静生活を癒す庭の生きもの

 春から夏にかけて自宅での安静生活が続きました。白内障手術後ひと月ほどの経過観察期間が過ぎ、開始した薪割りの初日にぎっくり腰。それがおさまるのにひと月かかり、薪作りを再開したら今度は帯状疱疹になりました。「ストレスを避け、家の中で安静に」と主治医は言いますが、外仕事ができないことが最大のストレスでした。その3か月間、私をなごませてくれたのが庭の生きものたちでした。200m²ほどの庭ですが、四季の移ろいを感じられる小さな雑木林です。年によって木々の勢いが違い、今年はコブシやガマズミ、タニウツギが溢れるほどの花を咲かせました。バラの花もたくさん咲きました。メダカが泳ぐ小さな池にはトノサマガエルやツチガエルが毎年の常連客。夜になるとカエルの鳴き声が庭に響き、玄関脇のメダカ水槽では、飼育8年目になる体長25cmの大ドジョウが餌を求めてくねくね泳ぎだします。
 さて安静生活も卒業し、暑い中ですが、体力の消耗に気を使いながら外仕事の再々開です。畑での夏野菜作り。積雪で傷んだ雨樋やサンルーフの補修。庭のサンシェード張り。そして8トンの薪作り。雨季と盛夏に来冬の備えができるのです。これが終わればめどが立ち、やれやれです。
 静養中はバラの花に癒されたので、バラを増やすことにしました。来年が楽しみです。サンルーフにはブドウの実が。今年も豊作のようです。
(2024年9月号掲載)

河川敷の歳時記

 毎朝2時間ほどかけて、愛犬とともに近くの堤防と河川敷を歩くのが1日の始まりです。散歩に出かける時刻は日の出に合わせて。夏は早く冬は遅めです。周りに田園が広がる小矢部(おやべ)川の幅250mの両岸を7~8km周回するのですが、四季を通して同じコースを歩いていると、いろいろなことに気づきます。
 今年の特徴はトビが極めて少ないことです。普段、堤防や河川敷の上空には多くのトビが飛んでいます。電柱や橋の電灯の上で羽を休めている姿をよく見かけます。視界が広く、餌を探しやすい環境だからでしょう。ところが今年は散歩中に見かけるのは1~2羽。環境に大きな変化はありません。今春の繁殖に失敗したのでしょうか。少し気になります。
 増えている生きものもいます。その筆頭はアオサギなどのサギ類。夜にギャーと鳴きながら飛び、初夏には校庭の松の木や照明塔のてっぺんで子育てに励む、少々かしましい存在です。
 堤防で静かに分布し始めた生きものもいます。驚くことにワラビです。数年前に1か所で自然分布、今はコース中に3か所確認しています。今まで観られなかったことです。おかげで身近で密かにワラビ採りができました。しかし3か所とも個体群は拡大中。散歩する人たちも気づき、採る人も増えてきました。さて、いつまで生存できることでしょう。
(2024年11月号掲載)

続・河川敷の歳時記

 日本は四季の国から夏と冬の二季の国になったのでしょうか。驚異的な残暑が去ったのは秋も半ばを過ぎてから。それでも昼は半袖、半ズボン。ようやく夜には虫の音を聞きながら涼しさに浸ることができました。柿の実の色づきや金木犀(きんもくせい)の香り、薪ストーブの初火入れの時期もずれ込みました。
 暑さを避けた日の出前の愛犬との河川敷散歩は4か月も続き、総距離は640kmになりました。中秋を過ぎたころにやっと日中へシフトできました。散歩コースは約8km、河川や河川敷、堤防、水田、丘陵といった広い開放空間が広がる場所です。毎日続けていると、さまざまな動きを感じます。早春から夏までトビが姿を消しましたが、秋にはなんとか2羽が戻ってきました。道端の新鮮なキツネの糞も増えています。堤防にはナツズイセンやワラビの群落、河原ではシャク(やまにんじん)が増えました。10年ほど前にはなかったことです。これから河川敷で山菜採りが楽しめそうです。ノビルやハマダイコン(河原大根)は一昨年の豪雨でかなりの群落が消失しましたが、少しずつ回復しているようです。
 自然の移ろいは必定です。しかし、それが昨今各地で問題となっている「異常気象」による過酷なものでは困ります。「異常」が通年となり、「普通」に変わらないでほしいものです。
(2025年1月号掲載)

今年はどんな春

 今春、皆さまの周りの風景はいかがですか。去年と変わりませんか。私は四季を通じて、身の回りの自然や人の営みの変化を観察しています。たまたま見つけた何気ない変化が、一過性のものなのか、それとも継続するものなのかが気になるのです。根底に温暖化への警戒心があるからでしょう。
 一昨年の3月号では冬枯れせずに青々と草が茂る堤防のけもの道、昨年の3月号はクマと人の未来について紹介しましたが、その様子は今年も変わりません。
 そして今回は、昨年の晩秋に気づいた小さな変化のお話です。家の前の川に遡上した鮭を見ていた時のこと。例年より遅く、2年ぶりの遡上でした。2匹の鮭が寄り添って泳ぐ横で、小さな銀鱗がいくつも光りました。鮎が群れをなして藻を食んでいるのです。師走の時期に初めて見る光景でした。もう一つは、早春に一斉に姿を消した堤防のトビが、秋に2羽戻ってきた話の続きです。小春日和の朝、20~30羽の群れが空に円を描いて舞っていました。避暑地から戻って、集団お見合いしているのでしょうか。謎です。地上では田んぼの二番穂が大きく育って、黄金色の波です。
 こんな光景や現象が続くか消えるか、見届けていきたいと思います。
(2025年3月号掲載)

山菜待つ春

 「そろそろ採りに行こうかな」と思っていた矢先、立春に長期最強寒波がやってきました。わが家も70cmの積雪に覆われました。それまでは意外と暖かく、雪のない冬でした。そこでふきのとうを採りに行こうとしていたのです。
 ふきのとう——富山では、早いものは12月末に顔を出します。あの独特のほろ苦い味と香りが堪えられず、山菜採りのスタートには欠かせません。ところが山はすっぽりと雪に覆われ、ふきのとうは隠れてしまいました。雪が解けるのを待つしかありません。畑の野菜も雪の下。スコップで雪をかき、掘り当てるのもなかなか難儀です。鳥たちも降り続ける雪に困っている様子です。庭の餌台にもあまり姿を見せません。除雪された道端の灌木(かんぼく)の下で、食べもの探しに苦労しているのを見かけます。
 立春に降ったドカ雪はこの分だと、山菜を採る近くの山では4月まで残りそうです。ということは、雪解けあとから顔を出すふきのとうを長く楽しめることになります。タラの芽やコシアブラ、コゴミ、ワラビ採りと重なりそうです。あちらを見たりこちらを見たり、上を見たり下を見たり、この春は、忙しい山菜採りの予感です。
 鳥たちもそれまで元気で過ごしてほしいものです。
(2025年5月号掲載)

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